専門部署を発足、自動化システムの内製化を推進/鍋屋バイテック
「ニンベンの付いた自働化」
織田信長軍が今川義元軍に勝利を収めた「桶狭間の戦い」。
この合戦が起こった1560年に、NBKは鍋や釜、鐘の鋳物を作る会社として産声を上げた。現在はプーリーなどの鋳物製品をはじめとした「伝統技術」と、ミニチュアカップリングや特殊ねじ、ドイツのZIMMER GROUP(ツィマーグループ)製のロボットハンドなどの非鋳物製品の「新技術」の両輪で事業を展開する。
NBKは主力製品であるプーリーの切削加工ライン向けを中心に、自動化システムの内製化に取り組む。谷口達也常務は「不具合や異常を検知したら自動停止するシステムを構築したい。わが社もトヨタグループなどと同様に人の“働き”を機械に置き換える『ニンベンの付いた自働化』との考え方を取り入れている」と述べる。
社内の生産現場で使用する自動化システムの構想設計から機械設計、電気設計、ロボットのティーチング(動作を覚えさせること)、組み立て、調整までをワンストップで担うのが、昨年新たに発足した専門部署のSI部だ。従来は内製設備のメンテナンスを手掛ける「製造技術部」が自動化システムを製作する機能も兼ね備えていたが、“顧客”である社内の生産現場からの自動化ニーズの高まりを受けてSI部を独立させた。
開発部門にフィードバック
美濃工園の生産ライン(提供)
岐阜県美濃市にある鋳物製品の主要生産拠点「美濃工園」では現在、鋳造(溶かした金属を型に流し込んで成形する加工法)後の素材の供給から切削加工、洗浄、外観検査、刻印、完成品のプーリーの排出までの一連の作業工程を完全無人化する自動化システムが3台稼働する。
SI部の前身である製造技術部が2020年に初号機のシステムを構築して以来、段階的な改良を加えると同時にシステムの数も増やし、プーリーの生産効率を高めてきた。
「わが社のプーリーは標準ラインアップだけでも3000種類以上あり、軸穴の径のサイズやキー溝加工の有無も含めると組み合わせは膨大な数に上る。そのため、1本の生産ラインで100種類近くのプーリーを加工しなければならず、外部のSIerに依頼するとロボットのティーチング費用がかさむ。こうしたコストを抑える目的で内製化に踏み切った」と谷口常務は説明する。
昨年稼働したばかりの最新の生産ラインは素材供給用と完成品排出用の2台のロボットをはじめ、ガントリーローダーを備えたヤマザキマザック(愛知県大口町、山崎高嗣社長)製の数値制御(NC)旋盤、洗浄機、外観検査装置、刻印機、ストッカーなどで構成されている。
中国のMech-Mind(メックマインド)の3Dビジョンシステムも活用しており、素材供給用のロボットはばら積みピッキングにも対応できる。
一方、完成品排出用のロボットは切削加工後のプーリーを洗浄機、外観検査装置、刻印機の順に供給してから、完成品を収納するストッカーに排出するまでの一連の搬送作業を担う。
NBKが総代理店を務めるツィマーグループのロボットハンドやハンドチェンジャーに加え、スイッチボックスや機械要素部品といった自社製品を積極的に採用しているのも大きな特徴だ。SI部の森淳吾部長代理は「自社製品を自動化システムに組み込むことで、一ユーザーとしての意見や要望を開発部門に直接フィードバックできる。また、工場見学に来たお客さまに対し、自動化システムを通じて自社製品をPRする狙いもある」と強調する。