[進化する物流vol.10]中国のグローバルAGFメーカーが日本に攻勢、ショールームも設立/VisionNav Robotics
70%がR&Dに従事
VisionNav Roboticsは中国の深圳に本社を構えるAGF専業メーカー。香港中文大学で教授を務める劉雲輝会長が、研究室の博士卒業生らと共に2016年に創業した。中国だけではなく、韓国や米国、欧州、オーストラリアにも拠点を構え、グローバルに事業を展開する。全体で500人超の従業員が在籍しており、そのうちの70%が研究開発(R&D)に従事する。
日本市場にも攻勢をかけており、今年4月には日本法人のビジョンナビロボティクスジャパン(東京都新宿区、任娜<Kiki>ゼネラルマネージャー)も設立した。
同社は現在、屋内用と屋外用で計8シリーズのAGFと自動けん引車をラインアップする。シリーズごとに揚げ高や最大可搬重量、車体サイズが異なり、顧客ニーズや活用シーンに合わせて最適なAGFを提案できる。
Kikiゼネラルマネージャーは「AGFはセンシング、ナビゲーション、制御の3つのコア技術で成り立つ。わが社は3つのコア技術の研究開発に注力しており、現場適用性が高いAGFを提供できるのが特徴。中でも、センシングには大きな強みがある」と話す。
センシングが最大の肝
AGFは無人搬送車(AGV)と違い、フォークを使ってトラックの荷台や自動倉庫などからパレット(荷役台)を取り出す必要がある。そのため、対象のパレットの形状と自らの位置を正しく認識した上で、適切な場所にフォークを刺せるよう車体の動きを制御できなければ、パレットの搬送を自動化するのは難しい。
「製造現場や物流倉庫ではパレットがラフに置かれるシーンも多い。作業者がフォークリフトを運転するなら微調整も簡単だが、AGFの場合はパレットの形状と位置を正確に把握し都度補正を掛けていかなければ運用が成り立たない。だからこそ、センシング技術がAGFの最大の肝になる」と石毛将太パートナーセールスマネージャーは言う。同社は、センサーから取得した点群データを解析するアルゴリズム(計算手法)に強みがあるため、乱雑に置かれたパレットでも形状やフォークポケットの位置を正確に認識できる。
また、パレットの位置に合わせ、AGFの動きを制御する補正アルゴリズムの研究開発にも注力する。
ナビゲーション関連の技術では、従来は壁や天井に貼り付けた複数の2次元バーコード(QRコード)を使って3点測量の要領で自らの位置を推定していたが、最近は3Dライダーセンサーで自己位置の推定と周辺環境のマッピングを同時に実施する「SLAM(スラム)方式」も開発。中国では既に運用されており、今年の年末ごろには日本にもその技術を展開する考えだ。
「SLAM方式ならQRコードを壁や天井に貼る必要がなくなり、AGFの導入がより効率的になる」とKikiゼネラルマネージャーは言う。