先の見えない時代の投資とは?日本市場開拓に本腰【後編】/ユルゲン・フォン・ホーレン ユニバーサルロボット社長
従来の産業用ロボットと協働ロボットの違い
――前編では、協働ロボット市場の現状などを伺いました。日本でも協働ロボットは注目を集めていますが、日本のロボットメーカーも協働ロボット市場に次々に参入し、競合が増えています。
競合が増え、競争が激化することは良いことだと考えています。2年半前に協働ロボットを作っていたのは世界で6社だけでしたが、今では50社もあります。各メーカーが「協働ロボットとはこういうものだ」と顧客にアピールしますので、協働ロボットの認知度向上につながります。また競合が増えたといっても、従来型の産業用ロボットのメーカーでは、社員数は多くても協働ロボットの担当者は本当に少数です。一方、われわれURは開発などを担うエンジニアだけで150人おり、全体では600数十人の社員がいます。その全員が協働ロボットだけに全力を注いでいるのです。これほどのメーカーは他にないと思います。
――脅威ではないと?
協働ロボットと一般的な産業用ロボットでは使われる技術に違いがあるだけでなく、そもそもビジネスモデルが大きく異なります。従来型の産業用ロボットは、人を除外した空間で複雑な作業をしていました。一方、協働ロボットは人と同じ空間でシンプルな作業をします。レンチやドライバーなど作業工具の延長にあるもので、ユーザー自身がシステムを組むこともできます。現場で働く人が自身の責任で使いこなす、道具の一種なのです。従来型の産業用ロボットで長年の実績がある企業の中には、協働ロボットを発売してもビジネスモデルの変革までできていないところが多いのではないでしょうか。また、協働ロボットを「柵なしで設置できる安全なロボット」としか認識していないメーカーもありますが、当社は安全性の他にもさまざまな条件を満たさなければ本当の協働ロボットとは言えないと考えています。
――柵なしで設置できるだけではない? それでは、URの考える協働ロボットとはどんなものですか。
安全柵なしで人と同じ空間で協働できる他、「素早くセットアップできる」「プログラミングが簡単」「配置の柔軟性がある」といった性質が重要です。つまり簡単に使えて柔軟に運用できる。1台のロボットを昼と夜で違う場所、違う工程で使うこともできます。昨年「eシリーズ」という新製品を発売しましたが、eシリーズもこうした考え方に基づいて開発しました。一例を挙げるとプログラムの入力画面や操作方法を見直した他、手首に力覚/トルクセンサーを内蔵しています。力覚/トルクセンサーを内蔵したことで研磨やバリ取り、ねじ回しなどさまざまな作業を外付けセンサーなしですることができ、それだけでなくエンドエフェクター(アームの先に取り付けるハンドなどのユニット)などの重量や重心を測れるので別途調べて手入力する手間も省けます。