[特集 国際ロボット展vol.1]新領域の開拓が始まった! どこまでも高まる汎用性
4割増の三品産業
産業用ロボットの新たな用途が次々に開発されている。市場規模はまだ小さいが、新分野の開拓が進めば産業用ロボットの市場は拡大し、FA業界にとってはシステムに取り込んで自社製品の付加価値を高める格好の材料になる。ユーザー企業にとっても、生産性で競合他社に差を付けるまたとない機会だ。
「業種別」で見ると、自動車や電機ではロボット活用が盛んだが、三品産業と言われる食料品や医薬品、化粧品の業界ではこれまでロボット導入があまり進んでおらず、新たな分野と言える。
日本ロボット工業会がまとめた2018年の「国内出荷(業種別)実績【会員+非会員】」では、電気機械向けの出荷台数2万619台(前年比10.2%増)、自動車向けの出荷台数1万7889台(同22.1%増)に対し、「食料品、飲料・たばこ・飼料」向けは1243台(同43.7%増)、「化学工業(医薬品、化粧品など)」は441台(同38.2%増)。
三品産業は台数では自動車や電機の1割にも満たないが、4割前後も増加しており伸び率は非常に高い。
工具測定や切削もロボットで
自動車などこれまで産業用ロボットを多用してきた工業系の分野でも、従来とは異なる工程でロボットを使う動きがある。
例えば外観検査だ。ロボットに検査対象物を持たせてカメラにかざす、あるいはロボットにカメラなどを持たせるなど、さまざまな方式が提案されている。外観検査だけでなく、ロボットを寸法測定に使う方法もある。
ロボットが計測の対象物を計測機にセットするシンプルな使い方もあるが、北川鉄工所(広島県府中市、北川祐治社長)などではつかんだ時点で寸法が分かるロボットハンドなども提案する。
寸法測定だけでなく、切削加工に使うツールホルダーに切削工具を取り付け、「プリセッター」と呼ばれる機器でその状態を測定する作業をロボットが担う自動化もツールプリセッターメーカーがこぞって提案する。
研磨工程の自動化も近年注目を集める。
研磨材メーカーのスリーエムジャパン(東京都品川区、スティーブン・バンダーロウ社長)は11月13日に「3Mロボット研磨ラボ」を開設。システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)と協力して、21年に研磨材事業の売上高を18年比で5倍に伸ばす目標を掲げ、ロボット研磨に本腰を入れる。
材料メーカーだけでなく、FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、会長・久保田和雄三明機工社長)の会長会社の三明機工(静岡市清水区)も独自に大型鋳物の自動研削システムを開発するなど、SIer側からの提案も活発だ。
研磨に近いシステムとして、バリ取りロボットシステムを提案する企業も多い。日本ロボット工業会が発表する統計データを見ても「研磨・バリ取り」用途の国内向けは、14年の157台から18年の312台へと倍増。同用途の輸出向けも、14年は41台で、18年は貿易摩擦の影響もあってか大幅減少したが、17年には891台を記録した。
ロボットに切削工具を持たせたロボット切削も今後の拡大が期待される。10月に名古屋で開かれた展示会「メカトロテックジャパン2019」では、主催者展示ゾーンでロボット切削を披露し、連日黒山の人だかりが絶えなかった。