[注目製品PickUp!vol.21]高精度な一体型アクチュエーターユニット【後編】/ニコン「C3 eMotion」
高精度を支えるエンコーダー
ニコンの新製品「C3 eMotion」は、垂直多関節ロボットの関節部分などに使われるユニットだ。エンコーダーやモーター、減速機、ドライバー、ブレーキなどの構成要素を一体化した。
一体型ユニットを使うことでロボットの設計が簡単になり、軸数やアーム長を任意に選択できるため設計の自由度も向上する。
技術的な肝は、独自の「ダブルエンコーダ構造」。エンコーダーを減速機側とモーター側の2カ所に搭載し、指令と結果を比較しながらモーターを制御する「フルクローズドループ制御」により、高精度な位置検出を実現する。
近年需要が高まり開発が活性化する協働ロボットの関節にも適した構造でもあり、いわば「時流に乗る」技術となっている。
C3 eMotionの高い精度を支えるエンコーダーの秘密は何か。
独自の「M系列」
ニコンのエンコーダー事業の歴史は長い。
1960年代後半からエンコーダーの開発に取り組み、69年に「光電式ロータリーエンコーダRIE型」を発売。昨年エンコーダー事業は50周年を迎えた。
90年からアブソリュートエンコーダーを手掛ける。エンコーダーには、原点からの移動量を常に積算して変位量を求めるインクリメンタル方式と、電源ONと同時に絶対位置を算出できるアブソリュート方式がある。92年、小型化と高信頼性の両立というアブソリュートエンコーダーへの市場ニーズに対して、「M系列1トラックパターン」を発明した。
M系列は、何トラック(層)ものパターンからなる一般的な「グレイコードパターン」とは異なり、1つのトラックパターンで絶対値データを生成し、グレイコードパターンでは不可能だった小型化と高信頼性の両立を可能にした独自の技術だ。
以降、「ロボットメーカーが欲しいエンコーダーの開発」を方針とし、地道に技術の蓄積と市場での信頼度向上を図ってきた。大手ロボットメーカーのロボットや高性能な二足歩行ロボットなどにも採用され、大手自動車メーカーからはロボット設備に使うエンコーダーとして指名されるなど、実績も積み上げてきた」(エンコーダ事業室事業推進部マーケティング課の田口洋課長代理)。
2007年には現在のエンコーダー事業の礎ともいえるアブソリュートエンコーダー「MAR-M40シリーズ」を発売し、14年にはエンコーダ事業室を立ち上げた。