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2024.08.15

連載

[注目製品PickUp! vol.70]新発売の3Dカメラと組み合わせ多品種少量の現場へ/Eureka Robotics「エウレカコントローラー」 

シンガポールに本社を構えるEureka Robotics(エウレカロボティックス、日本法人=東京都中央区、ファム・クアン・クオン社長)は、ロボットや周辺機器などを一括制御できる「エウレカコントローラー」を販売する。ロボットシステムを高精度かつ高速に制御できるのが強みで、精密作業の自動化に向く。昨年11月に発売したビジョンセンサー「エウレカ3Dカメラ」と組み合わせると、未登録のワーク(対象物)も認識でき、多品種少量生産の現場の自動化に役立つ。

高精度・高速制御技術に強み

 Eureka Roboticsのエウレカコントローラーは、他社製のロボットや周辺機器を接続して一括制御できる。ピック&プレースや組み立て、外観検査などの自動化システムの構築に役立つ。池川隆一営業部長は「ソフトウエアも直感的に操作できるため、さまざまなユーザーに提案したい」と語る。
 デンソーウェーブや三菱電機、安川電機、ファナック、ABB、ユニバーサルロボットなど主要なロボットメーカーの製品を接続できる。

幅1mmほどの小型部品2種類を認識して振り分けるデモシステム

 同社は、エウレカコントローラーの強みは「HA-HA技術」にあると表現する。「High Accuracy(高精度)」と「High Agility(高速)」に由来する同社の造語で、ロボットシステムを高精度かつ高速に制御できるとの意味を持つ。その技術を生かし、小型部品を50μmほどしかクリアランス(隙間)のない小さなケースに納めるロボットシステムなどを手掛けてきた。

 日本法人のオフィスには、エウレカコントローラーを活用した複数のデモシステムを常設しており、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)やユーザーから問い合わせがあった場合にショールームのように活用して製品を紹介する。
 その1つが、小型部品のばら積みピッキングの自動化システムだ。幅1mmほどの小型部品2種類を異なるケースに振り分ける。部品はガラス製のため慎重な取り扱いが必要だが、エウレカコントローラーで力制御も可能なため、部品をつかむ際に傷つけることなく運べる。

未登録のワークも認識

昨年11月に発売したビジョンセンサー「エウレカ3Dカメラ」

 昨年11月には、ばら積みピッキングや小型部品のピック&プレースの自動化などに向くビジョンセンサーのエウレカ3Dカメラを発売した。エウレカコントローラーと組み合わせることで、ばら積みピッキングなどを簡単に自動化できる。
 「エウレカコントローラーに搭載の人工知能(AI)で画像処理やワークの3Dモデル作成などをするため、エウレカ3Dカメラ自体は至ってシンプル。二つのレンズを使うステレオ方式のため、ワークに光を照射するプロジェクション方式と比べ作業者の目に優しく、ワークの表面状態などに左右されないなど認識性能にも優れる」と池川営業部長。透明なワークや背景色と同じ色をしたワークも含め幅広いワークを認識できる他、ワークがトレーやボックス内にある場合でも認識できるため活用シーンは多い。

 日本法人のオフィスに、エウレカ3Dカメラを使ったデモシステムも置く。小型の電子部品のばら積みピッキングを自動化した。単にばら積みの部品をピッキングするだけでなく、印字のある表面と無地の裏面を認識して異なる位置に置くようにした。
 シニアロボティクスエンジニアのドアン・ナット・タン氏は「表面と裏面のどちらが上を向いているかを瞬時に認識し、ケースの手前と奥にそれぞれ運ぶ。画像処理速度にも優れるため、正確なピッキングを高効率で自動化できる」と説明する。

  • エウレカ3Dカメラを組み込んだ、ばら積みピッキングのデモシステム

  • 印字のある表面が上を向くワークは奥に、無地の裏面が上を向くワークは手前に

 今年6月に、未登録のワークを認識できる新機能も開発した。通常のビジョンセンサーは事前に認識したいワークを登録する必要があるが、エウレカコントローラーとエウレカ3Dカメラを使えば、未登録のワークを認識し、ワークの適切な把持位置まで自動で判断できる。頻繁にワークの切り替えが起こる生産現場でも、効率的な自動化システムを構築できるというわけだ。
 池川営業部長は「例えば日用品から機械加工部品、さらにはその日買ってきた野菜まで、それらをランダムな場所に置いても問題なく認識しアウトプットできる。シンガポールやベトナムにある研究開発拠点と連携し、日々アップデートを重ねている」と語る。

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