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2020.06.29

自律走行型ロボットをローカル5Gで遠隔操作/DMG森精機

大手工作機械メーカーのDMG森精機は2020年5月21日、独自開発した自律走行型ロボット「WH-AGV5」を、特定のエリア内で使用できる次世代通信規格(5G)「ローカル5G」で遠隔操作する実験をNTTコミュニケーションズ(NTTコム、東京都千代田区、丸岡亨社長)と開始した。ローカル5Gの超高速通信や低遅延通信、同時多数接続などの特徴を生かし、WH-AGV5の性能向上を目指す考えだ。

NTTコムと共同実験

ウェブ会議システムで報道関係者に自社の取り組みを説明する森雅彦社長

 DMG森精機は20年5月21日、ウェブ会議システムを使って記者会見を開き、自律走行型ロボットのWH-AGV5をローカル5Gで遠隔操作する共同実験をNTTコムと始めたと発表した。

 ローカル5G とは、事業所など特定のエリアで使われる局所的な5Gを指す。5Gは20年春に日本国内での本格的な商用化が始まったばかりで、「超高速・大容量通信」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」などの特徴を持つ。
 今回の実験では、三重県伊賀市にある主要生産拠点の伊賀事業所内で28ギガヘルツ帯の実験試験免許を取得し、ローカル5Gのネットワークを構築した。実験は、記者会見と同日の20年5月21日から来年4月までを予定する。

WH-AGV5をローカル5Gで遠隔操作するイメージ

 WH-AGV5の遠隔操作だけでなくローカル5Gの電波特性や通信品質なども確認し、両社で本格導入に向けた検討を進める考えだ。

 また、DMG森精機は実験を通して、複数の無人搬送車(AGV)や機械設備をネットワークでつないで工場全体のモニタリングをするシステムなど、より高度な生産改善に生かせる製品やソリューションの開発を目指す。
 一方、NTTコムはより広範なニーズに対応できるローカル5Gサービスの開発に取り組む。

SUVのようなAGV

ワーク着脱や工程間搬送などを担うWH-AGV5(写真は「2019国際ロボット展」)

 ローカル5Gで遠隔操作するWH-AGV5は、自律走行型のAGVに協働ロボットを搭載したロボットシステム。工作機械で切削加工するワーク(被加工物)の着脱や、工程間のワーク搬送などを担う。今年中の発売を予定する。

 WH-AGV5の特徴は、独自開発したAGVにある。森雅彦社長は「金属加工の工場の床はオフロード(荒れ地)で、凹凸が多くさまざまな物が置かれている。そのため、多目的スポーツ車(SUV)のようなAGVが欲しかったが、目当てのAGVが見つからなかったので自分たちで作った」と開発の経緯を説明する。
 AGVの誘導方式には、レーザーセンサーなどで周囲の情報を把握し、自分の位置を推定しながら目的地まで自律的に走行する「SLAM(スラム)方式」を採用した。人が近くに来るとセンサーが検知し、AGVがすぐに停止する仕組みで、人と共存できる生産システムを構築できる。

5Gを導入する「AI切りくず除去ソリューション」

 今回の実験では、ローカル5Gの超高速通信や低遅延通信、同時多数接続などの特徴を生かして高精細な位置情報や詳細な稼働情報を取得し、AGVの自律走行の精度や安全性を高める考えだ。

 記者会見ではNTTコムとの共同実験の他に、人工知能(AI)を使った新技術「AI切りくず除去ソリューション」に5Gを導入する実験をKDDIと始めると発表した。高速・大容量という特徴を生かし、加工室内の大量の画像データを自動収集し、機能の高度化や有効性の検証に役立てる。
 さらに、ウェブ会議システムを使い顧客が出荷前の工作機械を確認する「デジタル立ち会い」のサービスや、会員制ウェブサービスも新たに開始するなど、デジタル化に関連した新しい戦略を矢継ぎ早に打ち出し、デジタル戦略を加速する姿勢を示した。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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