生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.09.09

連載

[注目製品PickUp!vol.27]熟練工の力加減をロボがまねる【後編】/新東工業「ZYXer」

大手鋳造装置メーカーの新東工業は、新しい事業の柱として昨年2月に産業用ロボット向けひずみゲージ式6軸力覚センサー「ZYXer(ジクサー)」の製造販売を開始した。従来の製品に比べて小さな力の変化も検知できるため、人の繊細な力加減が求められる作業をロボットに置き換えられる。ジクサーは幅広い産業に使える可能性があるが、現状は幅広くPRするのではなく、産業用ロボット向けの提案に力を入れる。「まずは産ロボ向けにジクサーを定着させ、そこから活躍の範囲を広げていきたい」と田名網克周グループマネージャーは言う。

足りないのは経験だけ

 鋳造装置を製造する新東工業は、会社を支える新たな柱として新規プロジェクトを立ち上げた。その一つが、2018年に本格始動したロボット用の力覚センサーのプロジェクトだった。

 当初は、今後さらなる市場の拡大が予想されるロボット本体を開発する案もあったが、参入のハードルが高く断念。代わりに、ロボットシステムの重要な要素になるセンサーに注目した。
 「センサーは、日本の企業がこれから生き残るためには欠かせない製品」と田名網グループマネージャー。そこで、人間の触覚、力加減をロボットに付与できる力覚センサーにたどり着いた。人の感覚をロボットに持たせるセンサーには視覚センサーもあるが、扱ったことのない光学系の技術が必要なことと、力覚センサーなら装置製造のノウハウも生かせるなど理由で、力覚センサーを選んだという。

ひずみゲージ式の力覚センサーのジクサー

 ロボットに求められる作業レベルが向上し、力覚センサーへの期待も高まっているという。「安いだけでは売れない時代に入った。ジクサーが注目されるのは、ワンランク上の性能をロボットユーザーが求めている証拠」と田名網グループマネージャーは説明する。

 ジクサーは、普及品の静電容量式のセンサーと比べ性能が高く、また同じひずみゲージ式のセンサーと比べても性能が高いという。作業前の準備として稼働させる暖機運転の時間は、他社製品が120分必要だったのに対してジクサーは30分だった。
 「ロボット用力覚センサーの業界ではうちは新参者だが、製品の性能には自信がある。自分たちに足りないのは経験だけ」と力強い。現状はロボットとハンドの間に取り付けるタイプだが、さらに改良を加え、将来的にはロボット内部やハンドの中に入れられるような製品も考える。

可能性は広がる

「産業用ロボットの後にさまざまな市場へ展開したい」と田名網克周グループマネージャー

 ジクサーは医療関係の機器にも採用が決まるなど、産業ロボットだけでなく、幅広い用途で使用できる。ただし、まずは産業用ロボットの市場で広く認知させて、しっかりと土台を固める考えだ。
 「引き合いがあればロボット以外でももちろん対応する。ただ新東工業としては、すでに市場のある産業用ロボットでジクサーの地位をしっかりと確立してから、徐々にサービスロボットなどに広げていく。力が加わる所ならどこでも使えるので、あらゆる市場に提案していきたい」と田名網グループマネージャーは強調する。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

TOP