日本法人のファンを作る【後編】/ABB中島秀一郎社長
革新的な新技術開発
――社長に就任し、今後何をしていきますか?
やるべきことはいくつもありますが、その一つが「バーチャルコミッショニング」の強化です。これは、デジタル空間での試運転を指します。ロボットを組み込んだシステムの制御には、ロボットを制御するコントローラーと、その他機器を制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)の2つが主に使われます。現在はシミュレーション技術が進化し、事前にロボットの動作設定とシミュレーションは高精度にできます。しかし、PLCまで含めた詳細なシミュレーションまではできていません。そのため、現場で統合テストや調整が必要になっています。ロボットコントローラーとPLCを統合した状態までシミュレーションできれば、現場での手間を減らせます。「事務所での作業を従来の1.2倍にし、現場での作業は半分に減らす」、これを目標にしています。
――ピクセルペイントとはどんな技術ですか?
ロボットアームの先端に付けたインクジェットヘッドで、車体に印刷するように塗装するシステムです。スプレーで吹き付けるのと違って塗料の無駄がありません。また、ツートンカラーや柄、ロゴの付いたデザインなどを手軽に実現できます。従来はツートンカラーにするためには、一度塗装した後、色を変える部分以外を覆って再度塗装する必要がありましたから、大幅な省力化になります。実は、3年前に本社に開発予算を申請したところ、最初は却下されました。しかし「これが必要だ」との現場開発陣の意思は強く、スタート時は本社に内緒で、日本法人の中でゲリラ的に開発を進めました。昨年フランス・カンヌで開かれた自動車塗装技術国際会議「SURCAR(サーカー)」に出品したところ「テクノロジー賞」を受賞するなど、高く評価されています。