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2020.11.12

日本法人のファンを作る【後編】/ABB中島秀一郎社長

ABBの日本法人(=ABB、東京都品川区)の社長に中島秀一郎氏が就任した。日本には大手ロボットメーカーがいくつもあり、ABBは日本法人だけ見れば大きくない。国内に競合がひしめくなかで、海外メーカーとしてどのように存在感を高めるのか。「ABBの優れた技術や製品に、日本法人ならではの付加価値を加えることが必要」と中島社長は話す。

革新的な新技術開発

――社長に就任し、今後何をしていきますか?
 やるべきことはいくつもありますが、その一つが「バーチャルコミッショニング」の強化です。これは、デジタル空間での試運転を指します。ロボットを組み込んだシステムの制御には、ロボットを制御するコントローラーと、その他機器を制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)の2つが主に使われます。現在はシミュレーション技術が進化し、事前にロボットの動作設定とシミュレーションは高精度にできます。しかし、PLCまで含めた詳細なシミュレーションまではできていません。そのため、現場で統合テストや調整が必要になっています。ロボットコントローラーとPLCを統合した状態までシミュレーションできれば、現場での手間を減らせます。「事務所での作業を従来の1.2倍にし、現場での作業は半分に減らす」、これを目標にしています。

塗装のグローバル拠点の島田のテクニカルセンター

――日本には、ABB全体にとっての塗装技術の開発拠点もあります。
 静岡県島田市にあるテクニカルセンターは、塗装に関するグローバルの拠点です。島田で開発した技術やシステムを、世界に展開しています。今年9月にも、島田生まれの「ピクセルペイント」という技術を発表しました。「この技術は世界を変える」と私は思っています。

車体に印刷するように塗装する「ピクセルペイント」

――ピクセルペイントとはどんな技術ですか?
 ロボットアームの先端に付けたインクジェットヘッドで、車体に印刷するように塗装するシステムです。スプレーで吹き付けるのと違って塗料の無駄がありません。また、ツートンカラーや柄、ロゴの付いたデザインなどを手軽に実現できます。従来はツートンカラーにするためには、一度塗装した後、色を変える部分以外を覆って再度塗装する必要がありましたから、大幅な省力化になります。実は、3年前に本社に開発予算を申請したところ、最初は却下されました。しかし「これが必要だ」との現場開発陣の意思は強く、スタート時は本社に内緒で、日本法人の中でゲリラ的に開発を進めました。昨年フランス・カンヌで開かれた自動車塗装技術国際会議「SURCAR(サーカー)」に出品したところ「テクノロジー賞」を受賞するなど、高く評価されています。

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