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2022.10.24

連載

[ロボットが活躍する現場vol.21]道半ばのロボ切削も、大きな糧に/八槻木工所

東京都板橋区の住宅街にある八槻木工所(鈴木雄一社長)は、木製の特注家具や造作家具の製作を得意にする。都内にある立地を生かし、デザイナーの作品やテーマパークの造形物、個人からの依頼も引き受ける。工場には15年前から数値制御(NC)加工機を導入するなど、設備投資にも積極的だ。2016年には産業用ロボットを使った切削加工システムを導入した。まだ、使いこなす段階にはなく道半ばだが、鈴木社長は「現段階でも導入して良かった」と話す。

池袋から30分の木工所

東京都板橋区にある本社工場

 八槻木工所は、マンションや戸建て住宅も立ち並ぶ東京都板橋区の準工業地域に3つの工場を構える。従業員数は12人で、国家資格「家具製作技能士」の1級を持つスタッフが複数在籍し、特注家具や造作家具の製作を得意にする。

 木材を入手しやすい山林近くに拠点を置く木工所が少なくない中、同社は池袋駅から電車と徒歩で約30分とアクセスしやすい位置にある。
 その立地を生かし、デザイナーと複数回の打ち合わせが要る木工作品、テーマパークに置くキャラクターの造形物、個人からの依頼も引き受ける。また、インターネット上で賛同者を募って資金調達するクラウドファンディングを通じて、自社製品の開発にも取り組む。

 鈴木社長は「都内では工場敷地の狭さや稼働時間への制約もある一方、顧客が近く、依頼のしやすさに地の利がある。その強みを生かすためにも、単品や小ロット生産の場合でも柔軟に対応できる体制を築き、高い品質と製作の早さを追求してきた」と話す。

「無茶だろう」「止めておけ」

3軸のNC加工機の前に立つ鈴木雄一社長

 デザイナーや個人からの案件では、自由なアイデアが多く、複雑で立体的な木工品の製作依頼も少なくない。テーマパークなどからは大型の造形物の製作依頼もある。そういった案件への対応力を上げる狙いもあり、6年前に産業用ロボットを使った切削加工システムを導入した。
 鈴木社長は「複数の機械商社に『無茶だろう』『止めておけ』と言われた。ただ、資金もわずかに余裕のあったタイミングだったので、今やらないと後悔すると決意した」と当時を振り返る。

 専用の防音室を用意し、産業用ロボットを設置。それに切削工具を回転させる主軸を持たせた。最大で700mm四方の被加工物(ワーク)を加工できる。
 また、ワークの設計データ(CADデータ)から切削工具を動かす軌道を算出する3DのCAD/CAMソフトや、それをロボットの稼働プログラムに変換するアプリケーションも併せて導入した。

発泡スチロールをイヌの形に削り出すロボットの様子

 当初は木材ではなく、木材の実加工の際や顧客との打ち合わせ時に参考にする発泡スチロール製モデルを作る用途に限定した。大体は順調に稼働し、加工精度を高めてきた。しかし、まれに不審な挙動があり、ワークに工具がめり込んだり、切削しすぎる課題を生じている。
 現在も試行錯誤を続ける。不審な挙動が生じた際に作業を止めるため、従業員が付きっきりで稼働を監視している。この状態では、まだ実際の製品となる木材の加工に使えない。

 それでも、鈴木社長は「現段階でも導入して良かった」と話す。

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