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2023.05.31

連載

[注目製品PickUp! vol.54]動力問わず同じ性能を発揮/コスメック「スマートシリーズ」

ロボットダイジェスト編集部が注目したロボット関連の製品を紹介する連載企画「注目製品PickUp!」。今回は、各種ジグ(加工補助具)やロボット周辺機器などを開発、製造するコスメック(神戸市西区、木村公治社長)のクランプ機器「スマートシリーズ」を紹介する。クランプ機器を作動させるには油圧や空圧、電気などの動力が必要だが、現場によっては使用できない場合がある。シンプルな構造のスマートシリーズは、動力源を問わず底面の凸部をプッシュするだけで作動し、どの動力源でも精度やクランプ力が変わらないのが特徴だ。現時点では用途に応じて3機種をラインアップするが、これからも開発を継続する。まずは認知度を向上させ、次世代の事業の柱となるようPRに力を注ぐ。

いっそ手で押してもOK

 コスメックは昨年11月に開催された第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)でクランプ機器「スマートシリーズ」を発表し、今年1月に納入を開始した。クランプ機器は物を固定する製品で、固定した状態で組み付けや搬送、検査などをするために使う。スマートシリーズには3機種あり、パレット交換向けの「KSL」、ワーク(組み付けや搬送、検査などの対象物)把持に使う「KSH」、搬送時の脱落を防止する「KSA」がある。

 クランプ機構を作動させるには、クランプ機構の反対側、つまり底面にある凸部をプッシュする。佐藤直人企画・広報室長は「プッシュができれば、エアシリンダーや電動シリンダー、その他の機構など動力を問わず、どんな方法でもいい」と特徴を説明する。例えば、物を固定する時は通常2カ所以上で把持するが、クランプ機器の数だけ何度もプッシュするのは手間なため、スライダーカムのようなメカを使えば、1モーションで複数個所の固定や解除をすることもできる。そして、スライダーを押す方法は何でもいいので、手で押してもいい訳だ。

 搬送だけでなくバリ取りなどの負荷の小さい仕事にも対応する。ロボットハンドにパレット交換用のKSLを装着すれば、ロボットハンドにパレットを固定して搬送などができる。クランプの作動に動力が不要なため、搬送とクランプ(固定)、アンクランプ(解除)をロボットハンドの交換なしでこなせる。

ばねの力で一定の性能

 スマートシリーズは自由に使えるのが特徴だが、それでいて常に同じ性能を発揮することも大きなポイントだ。凸部の押し込み方でクランプの精度や力や変わることがない。KSLの繰り返し位置決め精度は0.01mm、KSHの位置再現精度は0.03mmを実現し、パレット搬送やワークを簡易に把持するには十分だ。把持する力は3機種ともに50N(ニュートン)。

 内部構造は、ばねの力を使う原理そのものは共通。KSLを例に挙げると、凸部を押すとクランプ部分の小さな鋼球部が縮まってリリース状態となり、押し込みを解除すると、ばねの力で鋼球部が広がって元に戻り、パレット側のブロックを引き込んでクランプする。KSHの場合は鋼球ではなく内張りをするグリッパーでロックし、KSAはKSL同様に鋼球でロックする。

  • スマートシリーズの3機種

  • KSLのクランプ、アンクランプの動作

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