[特集 工場物流を刷新せよ!vol.2]「革新の分岐点」作り続ける、ニッチで光る技術を/村田機械 村田大介 社長
「縁の下の力持ち」から脚光浴びる業界へ
――物流事業の足元の景況感をお願いします。
短期的なピークはひとまず過ぎたと感じています。この数年間、新型コロナウイルスへの対策として、各国の政府がかなりのお金を出しました。同時にリモートによる仕事や電子商取引(Eコマース)も増えました。これらが追い風となってマテハン業界は活況でしたが、その揺り戻しの時期が来ていると感じます。半導体産業も調整局面に入っています。ただ、中長期的には伸びる業界です。少子化、働き方改革、省エネなどを背景に、物流自動化へのさらなる需要増が見込まれるからです。
――この2~3年の需要はかなり力強かった。
これまで業界団体の集まりでは「われわれは縁の下の力持ちだね」が共通認識でしたので、こんなに脚光を浴びるのはうれしい驚きです。ただし、市場の拡大は多数の新規参入も意味します。今後さらに競争は厳しくなるでしょう。
――物流業界の特色を教えてください。
機種が非常に多岐にわたり、また顧客ごとに個別のシステムを構築して納入する事業形態であるため、業界内である種のエコシステム(生態系)が形成されているのが特徴です。メーカーはおのおの得意分野を持っています。わが社は自動倉庫、ソーティングシステム、AGV/AMR(無人搬送車)などは得意(※詳細はvol.3)ですが、ロボットやコンベヤーなどは主に他社から購入して、システムの中に組み込んで納めています。ライバルメーカーとは、競いつつ、互いの製品を購入して自社システムに組み込んだりもするので、協調するバランス感覚も求められます。
――伸びている市場はどこでしょうか。
国やエリアというよりは得意な業種に対象を絞り、その分野で世界展開しています。独立した事業部として切り出した半導体工場内搬送システムはその典型例です。一般物流では、二次電池や半導体関連産業がありますが、これらは欧州や北米が成長市場です。流通なら内需の大きい北米や中国、そして経済成長著しい東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドも期待市場です。ただ、村田機械全体だと売上高の6割は海外なのですが、L&A事業に限っては3割にとどまります。エンジニアリング力が必須の事業なので、人員の獲得や維持など、海外展開はなかなか難しい部分があるからです。しかし、国内市場だけを見ていてはわが社の提案がガラパゴス化してしまう可能性もありますので、海外展開は続けねばなりません。
――L&A事業部の強みを教えてください。
カスタマイズが得意です。わが社程度の事業規模ですと、画一化された商品を全方位的に開発して大量供給…とはいきません。対象業種を絞って、その業界の特性に合わせた製品ラインアップを構成し、個別案件をカスタマイズする形が主流となります。その分野ではどこにも負けたくありません。