生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.06.29

MR技術で協働ロボの教示や配置検討が可能に/ネクストスケープ、ユニバーサルロボット

デンマークの協働ロボットメーカーのユニバーサルロボット(UR、日本支社=東京都港区、山根剛代表)は6月20日、ネクストスケープ(東京都港区、小杉智社長)の「RoboLens(ロボレンズ)」がUR公認の周辺機器「UR+(プラス)」の認証を取得したと発表した。ロボレンズは、現実空間と仮想空間の物を融合させて表示するミックスド・リアリティー(MR)技術を活用したシステム。ロボットの教示(ティーチング)や配置検討などに活用でき、「MR技術を活用したソリューションがUR+の認証を取得するのは今回が初」とURの西部慎一アプリケーション・エンジニアリング・マネージャーは言う。

ヘッドマウント型デバイスで、ジェスチャー操作も可能

ホロレンズを持つネクストスケープ高木亨RoboLensプロダクトマネージャー

 ネクストスケープが開発したロボレンズは、マイクロソフトが開発したヘッドマウント型デバイス「HoloLens(ホロレンズ)2」を利用して、ロボットの配置検討やティーチングができるシステムだ。
 月額制で「RoboLens Layout(ロボレンズ・レイアウト)」と「RoboLens Teaching(ロボレンズ・ティーチング)」の2製品を展開する。

ハンドジェスチャーで各種操作ができる

 ロボレンズ・レイアウトは、ロボットの配置や動作の検証などをするためのもの。ホロレンズのディスプレーは半透明のため、装着しても周囲を見渡せる。
 ロボットを配置したい場所に専用の2次元コードを置くと、その場所にロボットの立体映像が表示される。左右や上下から見たり、近づいて見ることもできる。ホロレンズには手の動きを認識する機能もあるため、ハンドジェスチャーで設置角度を変えたり、位置の調整もできる。ロボットの手先に表示される点をつまんで動かすと立体映像のロボットの姿勢を変えることができ、動作の検証も可能だ。
 実機なしで配置などを検討でき、既に稼働している設備とロボットを組み合わせる場合は、既存設備を稼働させたまま検証を進められる。

ロボレンズ・ティーチングのイメージ。作業平面の設定などもできる。

 ロボレンズ・ティーチングは、ロボットのティーチングをアシストするシステムだ。ロボットの実機と重ね合わせて立体映像を表示し、直感的かつ安全にティーチングや動作のチェックができる。
 立体映像のロボットの手先には小さな球が表示され、その球をつまんで動かすことでアーム先端の経路を作成する。
 各種コマンドも現実空間に重ね合わせて立体映像として表示され、グリッパーの開閉なども設定可能だ。

 好きな角度から作成した動作をチェックでき、そのプログラムを転送すればそのまま実機を動かすこともできる。
 「ティーチングペンダントの表示は2Dだが、ロボットの動作は3D。3Dの動きをそのまま3D空間上でティーチングしてチェックするロボレンズの方が、ティーチングペンダントよりも直感的にロボットを扱える」とネクストスケープの高木亨RoboLensプロダクトマネージャーは自信を見せる。

URの西部慎一マネージャー

 ロボレンズ・レイアウトはロボットシステムを提案することが多いロボットの販売代理店やシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に最適で、ロボレンズ・ティーチングはロボットのユーザー企業に向くという。
 URの西部慎一マネージャーは「MR技術を活用したUR+認証製品はこれが世界初。私も顧客の現場にうかがってロボットシステムの提案をすることが多いが、その場でさまざまな検証ができるため、このシステムは非常に便利」と話す。

 ネクストスケープの高木マネージャーは「ロボレンズ・ティーチングはこの5月に発売済みで、ロボレンズ・レイアウトは7月に発売予定。今後もデジタルツインやメタバースなどの技術を活用して新たなソリューションを開発し、社会の生産性向上に貢献したい」と述べた。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

TOP