ドイツのロボット展に見る最新自動化提案【後編】/automatica 2023
日本勢のプレゼンス大
前編では欧州・アジアメーカーからの提案を中心に紹介したが、日本勢ももちろん負けてはいない。少し駆け足になるが主要メーカーの特徴をざっと見て行こう。
会場に足を踏み入れた多くの人が最初に向かうB6ホールの入り口という一等地に大型ブースを構えるのは安川電機だ。
同社はスロベニアにロボットの生産工場を持ち、この4月にはフランクフルト近郊に欧州本社を新築したばかり。欧州市場攻略への並々ならぬ気合が感じられる。
安川ヨーロッパの安藤史生取締役は「地産地消をいかに実践するかが安川のポリシー。欧州市場向けの6割はスロベニアの工場で生産している。今は月産350台程度だがこれを2025年までには500台ペースに引き上げたい」と意気込む。
スロベニアの工場には開発機能もあり、そこで開発された新製品が「MOTOMAN(モートマン)-HD7/HD8」だ。ベースとなる6軸垂直多関節ロボット「モートマン-GP7/GP8」を三品産業(食品、医薬品、化粧品)向けに改良した。関節部分のシーリング機能を高め、粉じんや液体などが入り込みにくい仕様とした。協働ロボットではないがボディーを白くしたのが特徴だ。
川崎重工業はドイツの協働ロボットメーカー、ニウラロボティクスとの協業を明らかにした。今後は、対象地域などは限定されるようだが、ニウラ製の3、5、8、10㎏可搬の協働ロボットを自社のラインアップに加えて顧客に提案するという。大型のロボットを使って自社製のバイクを空中でハンドリングするデモは会場の遠くからでも一目で川重ブースの場所が分かるものだった。
ある種の異彩を放ったのはデンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)だ。1台の協働ロボットに①人と一緒に自転車を組み立てる②電子部品をピッキングする③粉体を取り扱う――という全く性質の異なる作業を順番にさせる展示で注目を浴びた。
同社はロボットコントローラー「RC9」にドイツのベッコフオートメーション製の産業用パソコンを採用しているが、会場ではベッコフの搬送システムと自社の協働ロボットを同期させたシステムも展示した。
澤田洋祐FAシステムエンジニアリング部長は「制御方法が共通なので、ロボット側と搬送側のいずれもマスターにもスレーブにもできる」と説明する。自動化の範疇(はんちゅう)が生産現場内でどんどん拡大する流れの中、この視点は今後欠かせないものになるだろう。
日本では電気・電子産業に強いイメージのスカラロボットの雄エプソン。しかし、エプソンドイツでマニュファクチャリングソリューション部門を統括するフォルカー・シュパニエル氏は「最大顧客は自動車産業。サービス対応の早さが高く評価されている」と胸を張る。
同社は欧州全域のサービスネットワークの構築に特に力を入れており、97~98%のスペアパーツなら翌日には顧客の元に届く仕組みを整えている。「ドイツ国内には豊富な在庫を取りそろえ、各国の代理店やパートナー企業にもある程度の在庫を持ってもらっている」とシュパニエル氏は言う。
自動車産業と一口に言っても、ヒューズボックスやギアボックスなど電子部品の組み立てに近いユニットも多く、メーカーごとに設計もまちまちだ。EV関連ではケーブル周りの自動組み立てに関する案件も増えているという。会場ではEV向けバッテリーセルを自動認識しピックアップするシステムが注目を集めていた。