生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2023.09.07

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デモ展示で、ロボット“リモート化”の活用方法を問う/リモートロボティクス×SSI(1/3)

ロボットの遠隔操作システムの構築をサポートし、多様な働き方の実現を目指すのがリモートロボティクス(東京都港区、田中宏和社長)だ。今年5月、遠隔操作システムの開発を支援するサービス「Remolink Builder(リモリンクビルダー)」の提供を始めた。Remolink Builderを活用したリモートロボットシステムの開発・提案に取り組むSSI(浜松市中区)の小笠原誠社長は「これまでロボットを導入してこなかった現場にも提案したい」と語る。遠隔操作のデモシステムを、9月13日から千葉市美浜区の幕張メッセで開催される製造業の専門展「スマート工場EXPO」で披露する。

より多様な働き方を提案

リモートロボティクスのRemolink Builderで実現した、協働ロボットの遠隔操作システム

 リモートとはいえ人手を必要とするロボットの遠隔操作システムを、なぜSSIは提案するのか――。「これまで自動化を諦めていた現場でも、省人化を実現できるからだ」と小笠原社長は語る。

 同社は台湾のロボットメーカー、テックマンロボットの国内代理店を務めており、現場の人手不足を解決するべく協働ロボットを提案している。

 通常はロボットで作業を自動化する場合、事前にプログラミングした一定の動きを繰り返させることが多い。そのため生産する品種の切り替えや突発的な停止などが発生した際、担当者が現場に行って対応しなければならないケースもある。人手不足を解決するための自動化でありながら、現場に人が必要という課題があった。

 小笠原社長は「人手不足が深刻化し、現場に配置できる人数も限られてくる。また大規模な工場などで工程の自動化は進んできているが、コストの問題からロボットの導入に至らない現場も多い」と話す。

 そこで目を付けたのが、リモートロボティクスの提供するサービスだった。リモートロボティクスはこれまでにないロボットの活用方法を提案する。それは遠隔でロボットに指示を出し、動作の開始や停止などを制御するやり方だ。
 「作業工程を全てロボット化するのではなく、大部分を自動化して残りを人が判断する。現場の完全自動化は難しいと悩んでいた企業にも、新たな選択肢を提示できる」と小笠原社長。

 リモートロボティクスの事業は、ロボットを介したリモート作業を可能にするプラットフォーム(基盤)サービス。ロボットの遠隔操作を実現するクラウドサービス「Remolink」と、リモートロボットシステム開発のスモールスタートを可能にする「Remolink Builder」を提供している。

 ロボットに遠隔で指示を送るシステムを構築でき、自宅からでもロボットを動かせる。そのため現場から離れた距離にいる人も作業を管理でき、例えば育児や介護などで勤務時間が限られる人も製造業に働き手として参加しやすくなる。
 これまで以上にさまざまな人材を採用できるようになり、人手不足の解消につながる。

 また小笠原社長は「生産工程の完全な自動化などと比べて費用を抑えられるケースもあり、その場合は従来に比べてロボット導入のハードルを下げられる」利点もあると言う。

 SSIがRemolink Builderを使って実現したロボットの遠隔操作システムは、幕張メッセで開催されるスマート工場EXPOで直接目にできる。
 当日披露するデモシステムについて、SSIの竹内千洋常務執行役員は「これまで以上に多様な働き方を選べるようになる。人とロボットが互いに補い合う画期的なシステム」と説明する。

ロボットへの遠隔操作は必要な時だけ

ロボットが自動で判断できない場合に人が遠隔で判断・指示を行う

 デモシステムではテックマンロボットの「TM AI COBOT(コボット)」を使う。最大の特徴はビジョンシステムや人工知能(AI)機能を標準搭載している点で、ピッキングや外観検査などの自動化に向く。

 ロボットアーム内蔵のカメラで対象物を撮像し、AIがその画像を自動で認識する。そのためピッキング作業のティーチング(動作を覚えさせること)などを簡単にできる。

 このようにAIがあれば人の判断は不要に思えるが、そうではないのだろうか。小笠原社長は「作業の切り替えなど、AIで判断し切れないこともある」と言う。

 そこで開発したのが、リモートロボティクスが提供するRemolink Builderを活用した、今回の遠隔操作システムだ。現場で稼働するTM AI COBOT、現場作業者用の遠隔アプリ、リモート環境で作業する管理者用の遠隔アプリで構成される。
 複数種類のSDカードのうち1種類のSDカードは事前にTM AI COBOTに学習させ、供給箱から自動で判別・ピッキングしパレットに払い出す動作をプログラミングした。

 作業範囲から該当するSDカードがなくなった時やパレットが満載になった場合には、現場作業者にアプリ内で通知をして、ワークの供給やパレット交換を促す。
 また事前に学習していないSDカードを認識した場合には、リモート環境にいる管理者にアプリ内で通知をして、退避用のパレットに払い出すか、廃棄するかの判断を仰ぐ。その際、現場作業者向けのアプリには「管理者の判断待ち」というステータスを表示する。

 ロボットの自動動作中は、SDカードをピッキングしている、パレットに置いているなどの稼働状況を、現場作業者・リモート環境にいる管理者両方の遠隔アプリに表示する。加えて、払い出したSDカードの枚数も表示するため、作業進捗(しんちょく)量を常に把握できる。

 竹内常務は「作業者は通知を受け取った際に操作をすれば良く、常にロボットを監視する必要がない。生産する種類の切り替えなども容易で、多品種少量生産の現場でも効果的な自動化を実現する」と語る。

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