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2024.04.12

連載

[SIerを訪ねてvol.43]四国をロボットが活躍する地に/港産業

港産業(徳島市川内町、港正祥社長)は、技術商社とシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の2つの顔を持つ。四国一帯を商圏とし、医薬品や製紙、自動車部品産業など四国で盛んな業種に合わせた自動化システムを提案するのが特徴だ。オートメーションカンパニーDX推進部ロボット課の金田雅哉課長は「『人口あたりで一番ロボットが使われているのは四国だよね』と全国から評価されるように、四国の他のSIerとも協力して自動化を推進したい」と意気込む。

高いハードルを越える

 港産業は徳島市北部の川内町に位置する産業団地「ブレインズパーク徳島」に本社を置く。徳島ICから車で5分、徳島阿波おどり空港から同15分とアクセスに優れる。本社以外にも愛媛支店や高知営業所、香川営業所と四国各県に営業拠点を設けており、四国をくまなくカバーする他、東京都には東京出張所も構える。

 同社は四国のさまざまな産業に向けて自動化を提案しており、その中でも医薬品分野への導入実績が多い。大手製薬会社が徳島県に大規模な製造拠点を置くなど、四国の中でも盛んな産業の一つだ。「医薬品産業で自動化装置の導入はどんどん進んでいるが、製品の試験や計量、パレタイズなど、人の手で作業している部分はまだまだ多い。そこをロボットや自動機で自動化したいとの声が増えている」と金田課長は語る。

港産業本社の外観(提供)

 製薬会社でロボットなどの自動化システムを導入する上で、コンピューターバリデーションが大きなハードルとなる。コンピューターバリデーションとは、医薬品の製造に関わるコンピューターシステムが、目的とする品質に適合する医薬品を製造し続けられるかを検証する作業を指す。コンピューターの故障や不具合で、国民の健康や生命への影響を及ぼさないようにするのが目的だ。
 この検証を通過することは、品質が安定した医薬品を継続して生産できることを意味する。ロボットはコンピューターで動作を制御するため、もちろんコンピューターバリデーションの検証対象となる。

 「コンピューターバリデーションを通過するためには、ロボットが安定して動作し続けることができ、要求仕様に適合することを示す書類を数多く用意する必要がある。通常のシステムインテグレーションの作業にバリデーションを通過するための作業も加わるとSIerへの負担が大きく、参入障壁は非常に高い」と金田課長。「当社は創業間もないころから製薬会社と深い関わりがあり、医薬品業界独特のルールを熟知し、ノウハウを蓄積してきた。そのノウハウをロボットSIer事業にも応用した」と語る。

ロボット導入のすそ野を広げる

ユニバーサルロボットの協働ロボットを提案することが多い

 港産業は重電機や家庭電化製品を販売する企業として1950年に創業し、その後は自動制御機器の販売などが中心的な事業となった。2015年に港忠徳会長がロボットを使った自動化需要の高まりを見越して、ロボット課を立ち上げた。
 産業用ロボットはファナックなど、さまざまなメーカーを取りそろえ、顧客からの要望に柔軟に応えられる体制を整える。協働ロボットでは、デンマークの協働ロボットメーカーであるユニバーサルロボットの製品を取り扱う。

 近年は製造現場の規模の大小を問わず、協働ロボットを使った自動化システムの導入が増えているという。「スペースが狭い製造現場では柵が不要な協働ロボットが重宝されるのはもちろんのことだが、規模の大きい製造現場でも柔軟に設置場所や役割を変更できる点が評価され、導入するケースが多い。いずれは、弁当の販売店のような極々小規模な場所にも導入できるよう、すそ野を広げていきたい」と金田課長は話す。
 ロボット導入のすそ野を広げるため地域のSIerや、愛媛県・徳島県との産官学の連携にも取り組む。

シミュレーションソフトで業務効率を高める

「シミュレーションソフトで自動化ライン構築の業務効率を高めたい」とオートメーションカンパニーDX推進部ロボット課の金田雅哉課長

 「自動化システムの設計はSIerにとり重要である一方、多大な時間を要する作業だ。既存顧客の案件対応だけで手一杯で、新規顧客の案件に取り掛かるリソースが不足している企業が多いように感じる」と金田課長は話す。その課題を解消するための取り組みの一つとして、シミュレーションソフトウエアの活用を試みる。

 シミュレーションソフトを使えば、仮想空間上で自動化ラインを再現し、そこで一連の動作の流れをシミュレーションできる。実際にラインを組む必要がないため、動作確認の時間や出荷後の手戻りが減り、工期を短縮できる。
 「SIerは設計作業だけでなく営業ツールとしてもシミュレーションソフトを活用し、新しい提案ができれば、限られたリソースで今より多くの仕事ができるようになるはず」と先を見据える。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)

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