生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2024.07.23

板金向けに2種類のパッケージシステムを開発/スギノマシン

産業機械メーカーのスギノマシン(富山県滑川市、杉野良暁社長)は板金加工の現場向けに「溶接ロボットシステム」と「カエリ取りシステム」を開発し、今年7月から受注を開始した。両方ともパッケージ仕様のロボットシステムで、ティーチング(動作を覚えさせること)に手間をかけることなく溶接作業やバリ取り作業を自動化できるのが特徴だ。同社は産業用ロボットと自動化システムの専門展「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2024」に出展し、両システムを披露した。

ティーチングの手間を大幅に軽減

CRbシリーズを使ったTIG溶接のロボットシステム。左奥にはファナックのCRXシリーズを使ったファイバーレーザー溶接のロボットシステムも

 スギノマシンは、金属の薄板を切断したり曲げたりして任意の形状に加工する「板金加工」の現場向けに2種類のパッケージ仕様のロボットシステムを投入した。

 一つは溶接作業を自動化する溶接ロボットシステム。自社製の産業用ロボット「CRbシリーズ」やシミュレーションソフトウエア「CROROROS(クロロロス)」などをパッケージ化しており、ワーク(溶接対象物)の形状に合わせてロボットの動作経路を自動生成できるのが特徴だ。また、独自のスキャナーシステムを使ってワークごとの精度のばらつきを自動で補正する機能も備えた。スキャンデータの解析・補正システムは、リンクウィズ(浜松市中央区、吹野豪社長)と共同開発した。

 RI事業部長の大西武夫執行役員は「通常はワークの形状に合わせて溶接トーチの位置やロボットの姿勢を細かく教示する必要があるため、溶接作業を自動化する上ではティーチングが大きなネックとなっていた。これに対し、今回発表した溶接ロボットシステムはスキャナーシステムによって、ワークのばらつきに合わせて動作経路を自動で生成できるため、ティーチングの手間を大幅に軽減できる」と語る。
 溶接ロボットシステムはTIG(ティグ)溶接かファイバーレーザー溶接の2種類に対応する。ロボットは設置面積やワークサイズに合わせ、壁掛けタイプのCRbシリーズかファナックの協働ロボット「CRXシリーズ」の2種類から選定できる。

 杉野岳副社長は「溶接はノウハウが必要なため、自動化するのが難しいニッチな分野。こうした領域にわが社の自動化技術やデジタル技術を生かしたいと考え、溶接ロボットシステムを開発した」と説明する。

来年度までに40台

溶接ロボットシステムと共に写る杉野岳副社長(右)と大西武夫執行役員(左)

 もう一つは、薄板の加工時に生じるバリ(突起物、カエリとも呼ばれる)を除去するカエリ取りシステム。CRbシリーズやクロロロス、自社製のバリ取りツール「BARRIQUAN(バリカン)」、3Dビジョンセンサーなどをパッケージ化しており、ティーチングに手間をかけることなくバリ取り作業を自動化できるのが特徴だ。

 スギノマシンは今年7月から溶接ロボットシステムやカエリ取りシステムの受注を開始した。7月4日~6日にわたって愛知県常滑市の展示会場「アイチ・スカイ・エキスポ」で開催されたRTJ2024にも両システムを公開し、来場者の興味を引き付けた。

 まずは国内の板金加工会社に攻勢をかける構えで、来年度までに両システム合わせて40台の販売を目指すという。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

TOP