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2024.09.04

連載

[ショールーム探訪 vol.28] 協働ロボットを比較検討できる場に/バイナス「バイナス協動ロボットセレクションセンター」

ロボットダイジェストの記者が、読者に代わってショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。27回目は、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のバイナス(愛知県稲沢市、下間篤社長)が2021年に本社の第二工場内に開設した「バイナス協働ロボットセレクションセンター」を紹介する。同社は「協働ロボットを比較検討できる場」として同センターを開設し、ユーザーニーズに合った協働ロボットの選定からアフターサポートまでを一気通貫で提供する。

オールバイナスで提案

「バイナス協働ロボットセレクションセンター」がある本社の第二工場の外観

 名古屋鉄道の津島線と尾西線が交差する津島駅から車で北に約10分。都市部から離れた静かな田園地帯にバイナスは本社を構える。
21年には本社の第二工場の1階に協働ロボットや自律走行型搬送ロボット(AMR)を活用した自動化システムを実証する目的で、「バイナス協働ロボットセレクションセンター」と「AMRテストフィールドセンター」をそれぞれ開設した。

 バイナス協働ロボットセレクションセンターでは、顧客のニーズに合った協働ロボットの選定から自動化システムの検証・実証、システム制御、アフターサポートまでを一気通貫で提供する。
 また、AMRテストフィールドセンターでは、AMRのタクトタイムのシミュレーションから停止精度の検証、凹凸のある床面や屋外での走行能力のテストなどを実施する。

 慢性的な人手不足を背景に、安全柵なしで既存の作業スペースに組み込める協働ロボットの需要が高まっているという。営業部長を務める大橋孝弘取締役は「当センターは単なる展示施設というよりも、どちらかといえば『協働ロボットを比較検討できる場』としての役割が大きい。協働ロボットを活用した自動化システムを検討する顧客に向け、協働ロボットの選定からシステムの構想、検証、そしてアフターサポートまでオールバイナスで提供したい」と語る。

工程間搬送を自動化

主要メーカーの協働ロボットを取りそろえる

 第二工場の1階は、①ロボットシステムを生産するエリア②バイナス協働ロボットセレクションセンター③AMRテストフィールドセンター――の3つのエリアを状況次第で流動的に使い分けている。
 バイナス 協働ロボットセレクションセンターに足を踏み入れると、まず目を引いたのが、伊勢湾の海を思わせる鮮やかな青色の床だ。壁一面は白基調の明るくすっきりしたデザインで、まるで青い海に白い雲が広がっているようだ。青色はバイナスのイメージカラーだという。

大橋孝弘取締役(写真左)から各メーカーの協働ロボットの説明を受ける記者

 ショールームの奥に進むと、3台の協働ロボットが出迎えてくれた。こちらのエリア(=写真上)では、右から川崎重工業の双腕スカラロボット「duAro(デュアロ)」、ファナックの協働ロボット「CRXシリーズ」、オムロンなどが販売する台湾のテックマンロボット製の協働ロボット「TMシリーズ」を展示している。   
 この他、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)の小型協働ロボット「COBOTTA(コボッタ)」やデンマークのユニバーサルロボット(UR)の「eシリーズ」など国内外の主要メーカーの協働ロボットを取りそろえる。
 
「わが社は特定のメーカーに特化しておらず、さまざまなメーカーの協働ロボットでシステムを構築できる。来場者にはできるだけいろいろなロボットを見てもらえるよう、あえて偏りをなくした」と大橋取締役は話す。
 
 来場者はさまざまなメーカーの協働ロボットの中から、目的の作業を自動化するために必要なスペックを備えたものがどれなのかを比較しながら検討できる。そのため、実際にシステムを導入した後のミスマッチを未然に防止できる。

 また、バイナスは協働ロボットだけではなく、協働ロボットとAMRを組み合わせた自動化システムも提案する。中でも近年、力を入れているのが協働ロボット付きのAMRを使った工程間搬送の自動化だ。
 大橋取締役は「組み立て工程よりも工程間搬送の方が自動化のイメージがつきやすく、幅広い業種の大手企業を中心に、工程間搬送の自動化の引き合いが増えている。高難度な自動化システムの検証や構築をすることで協働ロボットやAMRの技術的なノウハウを蓄積でき、また次の提案に生かせる」と語る。

それぞれの強みを生かす

 バイナスは技術商社の立花エレテックやロボットなどのレンタル事業を手掛けるオリックス・レンテック(東京都品川区、細川展久社長)と協業しながら、同センターを起点に顧客に自動化システムを提供する。
 顧客に同センターを利用してもらうには、いかに同センターの存在を認知してもらうかが重要だ。地元の商社や会社ホームページ経由での問い合わせもあるが、立花エレテックが持つ顧客基盤を生かせば、同センターの利活用をより多くの企業に呼び掛けられる。また、現在はメーカー各社がこぞって協働ロボットの技術開発や新製品開発に取り組むが、バイナスがその都度協働ロボットを購入し、同センターに展示し続けるのはコストの面から難しい。
 これに対し、オリックス・レンテックが提供するロボットレンタルサービス「RoboRen(ロボレン)」を使えば、同センターで自動化システムを検証する際に必要な最新の協働ロボットを必要な時に調達できる。

大橋孝弘取締役(写真右)と営業部第2営業課の川口博行課長

 営業部第2営業課の川口博行課長は「わが社の役割は、当センターに来ていただいた顧客に実機を見て触ってもらうことと、自動化システムが正しく機能するかを検証すること。立花エレテックとオリックス・レンテックが持つそれぞれの強みを生かし、3社一体となって自動化システムの導入を広げたい」と語る。
                       (ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)

[取材記者から]
バイナス協働ロボットセレクションセンターは、国内外のさまざまなメーカーの協働ロボットを展示している。来場者は自動化したい作業工程に対してどの協働ロボットが最も合うのか、実際に見て触って比較検討できる。一方、バイナスは高難度な自動化システムの検証や構築によってノウハウを蓄積し、次の提案へとつなげられる。同センターはそんな双方のうまみが存分に引き出される場所だ。今後、協働ロボットのニーズが広がるにつれ、同センターの需要もますます増えるだろう。


施設概要
名称:バイナス協働ロボットセレクションセンター
所在地:愛知県稲沢市平和町下三宅菱池917-2
予約申し込み:0567-69-6983もしくはバイナスのホームページから

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