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2024.11.15

連載

[ショールーム探訪vol.31]幅広い産業に自動化を/トライテクス「ロボコラボ」

ロボットダイジェストの記者が、読者に代わりショールームを訪問する連載企画「ショールーム探訪」。第31回は、ワークストッカーやコンベヤーなど製造ラインを自動化する周辺装置を開発、製造するトライテクス(愛知県常滑市、桑山裕章社長)を訪問した。同社は今年2月にシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)事業に参入。本社工場の一画に協働ロボットシステムのショールーム「ロボコラボ」を設立した。顧客を特定の産業に限定せず、幅広い産業をターゲットに据えて協働ロボットシステムを提案する。

今年2月にSIer事業に参入

トライテクスの社屋の外観(提供)

 トライテクスは陶器の町として知られる愛知県常滑市に本社を構える。常滑市に3つある工業団地のうちの一つ「久米南部工業団地」に同社はある。アクセスには自動車が便利で、「知多半島道路」の半田中央インターチェンジから10分ほどで到着する。

 同社はワークストッカーやコンベヤーなど、製造ラインを自動化する周辺装置を開発、製造する。工作機械メーカーや自動車関連の部品加工会社などに向け、約30年にわたり製品を供給してきた。
 そして今年2月にはSIer事業に本格的に参入。本社工場の一画にショールーム「ロボコラボ」を開設した。「主要顧客の工作機械業界は需要の浮き沈みが大きい。工作機械業界内で各種ロボットを使った自動化への注目度が高まっていた背景もあり、わが社の周辺装置とロボットを組み合わせた自動化システムの構築を新事業にしようと考えた」と桑山裕章社長は参入の経緯を話す。
 SIer事業では顧客を特定の産業に限定せず、幅広い産業をターゲットに据える。桑山社長は「もともとはものづくりでさまざまな困り事を解決するためにトライテクスを設立した。SIer事業でも、人手不足や高齢化などあらゆる産業の課題に応える提案をしたい」と力を込める。

 ロボコラボでは現在、安川電機、デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)、デンマークのユニバーサルロボット(UR)の3社の協働ロボットを展示している。「ロボコラボにあるロボットは全て安全柵なしで使える協働ロボット。省スペースで設置でき、展示機は3台とも台車に取り付けられているためメンテナンス時の移動も簡単」と榊原敏文常務は語る。

 「自動車産業の関係者はロボットを使った自動化に詳しい人が多い。一方、食品や農業など自動化がまだ浸透していない産業では、ロボットになじみのない人もいる。そこで、複数のメーカーのロボットを用意し、実際に見て、触ってもらえるような場所にした」と桑山社長は展示の狙いを話す。ロボコラボは事前予約をすれば見学が可能だ。

テストセンターの役割も

ロボコラボに入るとまず目に飛び込んでくる安川電機の協働ロボット

 事務所に隣接する組み立て工場に移動すると、すぐにロボコラボの青い壁が見える。出迎えるのは「ばら積みピッキング」「ねじ締め」の2つのシステムだ。
 ねじ締めシステムは展示品でもあり、同社のワークストッカーの組み立て工程でも実際に使う。「ただショールームにロボットを飾るのではなく、わが社が実際に使っている協働ロボットシステムも活用事例として見てほしい」と桑山社長は話す。

デンソーウェーブとURの協働ロボットを使ったねじ締めシステムの展示

 また、人の侵入を検知するエリアセンサーやセーフティー・ライト・カーテン、各種エンドエフェクター、ビジョンセンサーなどのさまざまな周辺機器もそろえる。「ロボコラボはお客さまが持ち込んだワーク(対象物)を実際にカメラで認識できるか、ピッキングできるかを検証するテストセンターの役割も担う」と桑山社長は説明する。
 ロボコラボではシステムの構築から、周辺装置の製造、システムの据え付け、アフターサポートまで一貫して担う。加えて、リスクアセスメント(リスクの分析と対処)についても専門知識を持つ社員が対応する。

榊原常務(=写真左)からエリアセンサーやビジョンセンサーの説明を受ける記者

 同社には電気や機械の設計提案から部品加工、塗装、電気制御、組み立てまであらゆる部門があり、周辺装置などの各種製品を自社で一貫製造している。そのため、協働ロボットさえ用意すれば、台車やワークストッカーなどの周辺装置の製造は社内で完結できるのが強みだ。桑山社長は「自社で賄える工程が多いため、他社よりも『安く、早く』システムを提供できる上、お客さまの要望を基に細かい部分まで作り込める」と強調する。

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