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2025.03.25

[気鋭のロボット研究者vol.34]人の動作をロボットで再現する【後編】/神戸大学 元井直樹 准教授

神戸大学の元井直樹准教授は人間の動作をデータとして収集するだけでなく、そのデータを使ってロボットに動作を再現させる研究にも取り組む。それに加えて、収集した動作データなどを人工知能(AI)に機械学習させて、新たな動作を創出する研究にも挑戦する。これが実現すれば、人が動作を教えることなくロボットが自律的に動けるようになる。

動作をカスタマイズできるように

人間の動作を再現する研究で2台のパラレルリンクロボットを使う

 元井准教授はロボットによる人間の手作業の自動化について研究する。
 前編では人間の動作をデータとして収集する研究について紹介した。しかし、ロボットを動かすためにはデータの収集だけでなく、人間の動作をどのように再現するかも重要になる。
 そこで人間の動作を記録、再現するモーションコピー技術を活用し、ロボットによる人間の動作の再現に取り組む。この研究では2台のパラレルリンクロボットを使う。1台は人がロボットをつかんで文字を書く動作をし、動作データを収集する。ここまでは前編で紹介した人間の動作の抽出に相当する。その後、もう1台のロボットが抽出したデータを基に、把持した筆で紙に文字を書く。抽出した動作データを調整することで、ただ同じ動作をするだけでなく、ロボットのストロークを拡大、縮小したり、動作速度を高速、低速にしたりもできる。

新たな動作を生み出す

「人間の動作の抽出、再現を通じて熟練者の技術を可視化する」と元井直樹准教授

 人間の動作の再現から一歩進み、人間のような動作を創出する研究を3年前に始めた。動作を抽出したデータや画像情報などをAIに機械学習させる。学習した膨大なデータを分解して、組み合わせることで、自律的に新たな動作を生成する。
 「これまで抽出してきたデータを手本にして新たな動作を生み出すイメージ。例えば、熟練者の暗黙知をデータとして収集するだけにとどまらず、熟練者の高い技術力を生かした新たな動作の創出ができるようになる」と力強く語る。

―――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 斉藤拓哉)


元井直樹(もとい・なおき)
2007年慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻前期博士課程修了、同年トヨタ自動車入社。10年慶應義塾大学大学院理工学研究科総合デザイン工学専攻後期博士課程修了。11年横浜国立大学大学院工学研究院研究教員。14年神戸大学大学院海事科学研究科講師。16年4月より現職。19年から20年までウィーン工科大学で客員教授を兼任。休日は子供と遊ぶのが癒やしのひと時。兵庫県出身の42歳。

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