五感に頼る作業をAIに/エイアイキューブ 久保田由美恵 社長 インタビュー
自動化の領域拡大にAIを使う
――現場に導入してさらに見えてきた課題は。
例えばロボットによる把持の対象物は、金属部品などの剛体、布やゴムなどの柔軟物、カラアゲや野菜などの不定形物の3つに大別できます。剛体については従来から自動化が進められてきました。つまり、AIを活用すべきは柔軟物や不定形物の把持です。形状が不均一または曖昧なものは、剛体を持つときのようなパターンマッチングの考え方を適用するのが難しいわけです。そうした分野でこそAIが活躍できると考えています。
――人手による作業からの置き換えですね。
AIの研究開発を続けると、結局「人ってすごいな」と強く感じます。人は一度に多くのことを処理している。その再現には、全てを作業単位に分割し、単位ごとに判断し、出てきた全ての判断を一つにまとめなければならない。それさえできれば自動化できるのですが、当然ながら大変難しい課題です。
――AIを使う領域の拡張は容易ではない?
バラ積みピッキングを例にしますと、17年に安川電機がAIによるピッキング機能を発表しましたが、これは実機で数カ月かけてデータを収集し、学習させるものでした。アナログな作業を繰り返してビッグデータを得るには、それほど長い時間がかかるわけです。しかし、その問題をアリオムで解決することで、AIモデル(計算式や計算方法)の生成にかかる時間を数カ月から一晩に短縮できました。こうした技術革新は着々と進んでいます。
――今後の展望をお願いします。
繰り返しとなりますが、今すでに自動化できていることはAIに置き換えるべきではありません。仮にやったとしても、結局はコスト競争に陥ります。競争すべきはそこではありません。それよりも、自動化の領域を拡大するのにAIを使う、との考え方が重要なのです。新たな領域でAIを活用した上でコスト低減や運用の簡易化を図るのが真っ当な順序、考え方と言えるでしょう。エイアイキューブでは今後も各種FA機器の新機能としてAIを実装する形で開発を進めます。
(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角秀)
久保田由美恵(くぼた・ゆみえ)
1991年九州工業大学情報工学部卒、同年安川電機入社、基礎研究所FA技術研究グループに配属される。97年技術開発センタソフトウエア技術課、2001年ロボット事業部制御技術部、16年次世代制御プラットフォーム開発部。2019年より現職。1968年福岡市生まれの53歳。