[SIerを訪ねてvol.5]人とロボットの協調目指して【後編】/IDECファクトリーソリューションズ
3つの分野で自動化システム提供
IDECファクトリーソリューションズはもともと「コーネット」という社名で、工作機械や半導体製造装置の制御盤や分電盤(電気を各所に分配するための箱でブレーカーなども収納される)などの製作を手掛けた。
2014年5月末に制御機器メーカーのIDECグループの傘下に入り、16年9月に現在の社名となった。
現在は①ロボット事業②制御システム事業③図書館事業――の3つの分野で、顧客のニーズに合ったさまざまな自動化システムを提供する。
「当社はIDECグループの中では、ロボットに限らずさまざまなシステムを構築する、システムインテグレーションの事業会社との位置付けが強い」と鈴木正敏取締役ロボットシステム事業本部長は説明する。
①のロボット事業は前編で主に取り上げた、協働ロボットを使ったロボットシステムの構築を担う事業だ。
②の制御システム事業は同社の売り上げの中で最もウエートが大きく、制御盤や分電盤、電気配線に使われるワイヤハーネスの設計開発を手掛ける。この他、郵便局の発券システムや回転寿司の注文システムなどの開発実績もある。
③の図書館事業は、大学や公共の図書館を運営する業者に対し、自動貸し出しシステムや入退館の管理システムを構築し納入する事業だ。
協働ロボット×安全=差別化
①のロボット事業は②の制御システム事業の派生形として、14年に同社がIDECグループの傘下に入ってから本格的に立ち上がった。
ロボットSIerの中では後発組に当たる。競合他社と差別化を図るため、同社が目を付けたのが協働ロボットだった。
協働ロボットは国内では、13年に厚生労働省が産業用ロボットに関わる労働安全衛生規則を一部改訂したことで一気に注目度が高まった。モーターの定格出力が80Wを超える産業用ロボットを使う場合、従来は安全柵で囲う必要があった。しかし、13年の改訂で、適切なリスクアセスメント(リスクの分析と対処)を講じれば80W以上の産業用ロボットでも安全柵なしで人と一緒に働けるようになった。
鈴木取締役は「安全柵を外すにはリスクアセスメントが必須だが、産業用ロボットメーカーやSIerはこれまで安全柵で囲った状態でロボットシステムを提供してきた。新しい安全方策への適応はハードルが高い」と述べる。
一方、同社は親会社にIDECを持つ。IDECは制御機器だけではなく、各種安全スイッチや非常停止用スイッチなどの安全機器も製造する。さらに、安全に関するセミナーやコンサルティング事業も手掛け、製造現場のリスクアセスメントに長けている。
「協働ロボットという新しい自動化ソリューションと、IDECが持つ安全技術の強みを生かせば競合他社と差別化できる。そう考え、協働ロボットに特化した事業を始めた」と鈴木取締役は語る。