トップメーカーの社長が明かす「最強の人材活用法」【後編】/安川電機 小笠原浩社長
社員の評価をデジタルに
――前編では「個人の事情に合わせた働き方ができる仕組みを整え、それを会社として公平に評価するのが重要」とのお話を伺いました。これは非常に難しい取り組みです。
大事なのは、評価をデジタルにすること。つまり、仕事のプロセスを含めて結果を評価することです。全ての仕事のジョブディスクリプション(職務記述書)を作成して、やらなければならない仕事を定義し、その到達度で評価します。在宅勤務や育児休暇など、制度化するのもいいのですが、制度と個人の事情や希望は必ずしもかみ合いませんから。ただ、実際にはなかなか難しいんですけれどね。
社員の不満にきちんと向き合う
――社長としてのこだわりは何かお持ちですか?
こだわりというほどではありませんが、社長になってから記名式のES(従業員満足度)アンケートを毎月実施しています。社員約2500人が対象です。定例質問では、今の会社の方針や業務内容について上司から説明を受けたか尋ねます。すると、必ず数%は「聞く気もない」「聞きたくもない」と回答する人がいるんです。毎月同じ人間がそう回答するわけでもありません。記名式アンケートにそこまで書くのは何らかの理由があるはずです。上司との折り合いが悪いのか、仕事が合っていないのか、本人にやる気がないのか。「聞く気もない」状態になる原因を探って、解決するよう取り組んでいます。
――記名式アンケートでそれを言えること自体が御社の社風を表しています。
社員の不満は、ちゃんと追いかけるのが重要です。こちらに解決する気が無ければ、彼らも「どうせ言ったって…」と考えて何も言わないに決まっています。自由記述欄に「社長に言いたいのですが」「社長に聞きたいのですが」とあれば、私も必ず自分で回答しています。目に見える成果は出にくいですが、ボディーブローのようにじわじわと効く大事な業務です。
互いに言いたいことを言う「対話集会」
――他に何か取り組まれていることは?
「対話集会」はずっと続けています。私自身もやりますし、幹部や部門トップには必ず社員との話し合いの場を持たせています。お昼に弁当を食べながら5人~6人で2時間半くらいのパターンが多いです。私の場合は今の会社の状況を説明し、集まる相手によって内容や要望、課題なども考えます。こっちも言いたいことを言い、相手の話も聞きます。資料も自分で作ります。年間100人くらいは直接会って話すようにしています。
――終わり
(聞き手・編集長 八角秀)
小笠原浩(おがさわら・ひろし)
1979年九州工業大学情報工学科卒、安川電機製作所(現安川電機)入社。2006年取締役モーションコントロール副事業部長。インバータ事業部長、モーションコントロール事業部長などを経て13年取締役常務執行役員。15年代表取締役専務執行役員。16年3月から現職。人づくり推進担当、ICT戦略推進室長を兼務。愛媛県出身。1955年生まれの63歳。
※「月刊生産財マーケティング5月号」でも再編集版をお読みいただけます。
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