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2023.08.09

工場のデジタルデータを製品設計に生かす/安川電機

安川電機は今年3月、埼玉県の入間事業所にある「安川ソリューションファクトリ」で新設ラインを稼働した。生産性を高めるためデジタルデータの活用に取り組んでおり、2018年の工場立ち上げ以来さまざまなデータを集めて分析してきた。新たにラインを設置するにあたり、それまでに収集したデータを生産工程の改善に生かした。渡辺賢司工場長は「現場の課題を製品設計に反映することで、より自動化に適した生産体制が構築できる」と語る。

工場内データを活用した新設ライン

デジタルデータを活用する安川ソリューションファクトリ

 安川電機は今年3月、入間事業所の安川ソリューションファクトリにサーボモーターとサーボアンプの生産ラインを新設した。工場内データに基づいて従来の課題を解決しており、生産性をさらに高めた。

 安川ソリューションファクトリは小型のサーボモーターとサーボアンプを生産する工場で、18年から稼働している。工場をセル単位で自動化してデータ管理する「i³-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」のコンセプトを実践しており、サーボモーターとサーボアンプの「Σ(シグマ)-7シリーズ」を量産してきた。
 生産工程を徹底的に自動化し、膨大なデータを処理できる体制を構築した。ソフトウエア「YASKAWA Cockpit(安川コックピット、YCP)」で、装置の稼働状況を可視化して分析する。さらに生産実績や品質の管理などをする製造実行システム(MES)も採用し、生産状況をモニタリングしている。

 新たに立ち上げたラインでは「YRM-Xコントローラ」で、設備のデータを一元管理できるようにした。渡辺工場長は「工場の知能化が進み、より細かいデータも取得できるようになった。これまで設備の自動化に取り組んできたが、データの分析結果を製品の設計にも生かすことで生産の最適化を図った」と語る。

自動化に適した製品設計を

部材の投入や目視確認のため、ステーション間にあえて人が入れる余地を残す

 ソリューションファクトリの1階でサーボモーターを、2階でサーボアンプを製造する。1階は「ステータ組立」「本体組立」「エンコーダー組立」などのエリアに分かれ、本体組立のエリアはさらに複数の作業ステーションで構成される。作業ステーション内で垂直多関節ロボットや自動化機器が稼働し、段取り替えも自動で行う。
 2階には「基板実装」や「ユニット組立」などのエリアがあり、無人搬送車(AGV)も活用してサーボアンプを作る。

 新設ラインではΣ-7と新機種「Σ-Xシリーズ」を混流生産できるように、1階の組み立て工程を工夫した。作業ステーション間をつなぐコンベヤー上を、部品やジグ(補助具)を載せたパレットが動く。このパレットの構造を、2つのシリーズに適用できるように設計変更した。

今年3月に新設した生産ライン(提供)

 またサーボアンプの製造工程で発生していた不具合を、Σ-Xシリーズの設計変更で解決した。異なる素材の部品を組み合わせるかん合工程を自動化すると、スムーズにはめ込めないケースがあった。人手なら組み合わせる際に部品同士の角度や向きを調整できるが、一定の動きを繰り返す自動化設備ではそれが難しい。そこでカメラやセンサーで製造時のデータを取得し、不具合の原因を究明した。かん合時に部品が引っかかってしまう位置を特定でき、自動ではめ込みやすいような構造に設計した。

 他にシーリング材のタンクを大型化し、補充の頻度を減らす工夫も加えた。渡辺工場長は「段取りや補充、突発的な機械の停止などで発生する、設備の非稼働時間を削減するように改良した。革新的に効率が良くなったわけではないが、データを設計に生かすことで従来の課題を確実に解決できた。新設ラインの稼働で生産性は2割ほど高まる」と話す。

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