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2020.06.26

先行き不透明だが、中長期的には需要拡大も/主要ロボットメーカー決算

産業用ロボットメーカーの2020年3月期決算が発表された。米国と中国の関係悪化や、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ほぼ全ての会社で売上は前期比減となった。今後も引き続き不透明な状況が続くが、半導体向けロボットの引き合い増加や中国市場での受注回復など、明るい兆しもある。また、新製品を開発し、新規受注の確保に乗り出す企業も多い。

米中関係、コロナでほぼ全てが売上減

 20年3月期(19年4月~20年3月)は、米国と中国の貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱問題など地政学的なリスク、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、景気は後退局面を迎えた。それはロボット産業でも例外ではない。

 国内のロボットメーカーが発表した決算の、産業用ロボットに関わる部門の売り上げを見ても、前期比で減少した会社がほとんどだった。なお、各社によって事業部門の分け方が異なるため、表にまとめた金額がそのままロボットのシェアにつながるわけではない。
 ファナックは「国内と欧州で堅調に推移したが、米州の自動車産業で設備投資の谷間が続き、さらに中国の一般産業向けが弱い動きとなった」と述べる。

 一方、ヤマハ発動機のロボティクス事業とダイヘンの溶接メカトロ事業の売上高は、前期比増と発表された。ただしヤマハ発動機は、昨年に子会社化した「ヤマハモーターロボティクスホールディングス(YMRH)」の半導体製造装置の売り上げも含む。そのためYMRHの影響を除くと減収減益となる。またダイヘンは欧州の事業拡大に取り組んでおり、昨年12月にドイツのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のラゾテックを買収したことが理由に挙げられる。

20年度はどう動くのか?

 さまざまなリスクがあり、厳しい状況が続いた19年度だったが、20年度は各社どう動き、予想するのか。コロナ禍の影響をどれほど受けるか不透明なため、見通しが立てにくく、多くの会社が今期の売り上げ予想を未定としている。

 川崎重工業は20年度のロボット事業について「台湾や韓国の大手半導体メーカーの投資が再開したことで半導体製造装置向けロボットの拡大が期待できる。ただし、自動車をはじめ一般産業向けロボットは投資の先行きが懸念される」とのコメントを発表。次世代通信規格(5G)の普及で半導体市場に期待を寄せる会社は他にも多く、中長期的な需要の拡大を予想している。
 またセイコーエプソンは「新型コロナウイルスの影響は比較的少なく、足元では中国などで回復の兆しも見える。20年度は、社内活用を拡大することで高難度作業事例の蓄積、顧客の自動化要求への対応などさらなる成長に向けた準備を進める」とした。
 
 安川電機は決算発表での質疑応答で「工場の生産合理化、材料や部品の調達、選定の改善などでコストダウンを進める」と回答。他にもコンピューターやスマートフォンなどのデジタル機器や自動車、半導体産業への取り組みの強化、21年度開設予定の「安川テクノロジーセンタ」設立準備の加速を発表した。

 注力する取り組みとして新製品の開発、販売を挙げる会社もあり、ファナックでは新型の協働ロボット「CRX」を昨年12月に発表。今年の6月から出荷を開始した。ヤマハ発動機は新製品の市場投入をしながら、YMRHの子会社化でトータルソリューションの強化を図ると、20年12月期第1四半期決算で示した。

 コロナ禍がどれだけ続き、どれほどの規模になるのか。まだまだ不透明な状況が続くが、景気の谷は次の受注ピークに向けた準備期間とも言える。いずれ来る景気回復期を、競争力のある製品や効率的な生産体制で迎えられるか――。今期の取り組みが、今後の各社の明暗を分けそうだ。

(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)


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