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2020.11.16

腕の重さの支持に特化したアシスト装置を発売/SoLARIS

中央大学初の大学発ベンチャー企業、SoLARIS(ソラリス、東京都文京区、中村太郎社長)は11月12日、上腕アシスト装置「TasKi(タスキ)」の販売予約を開始した。まずは簡素な構造と仕様の製品を発売するが、顧客ニーズに応じて柔軟に製品開発を続ける。将来はソラリス独自の強みを盛り込んだ新方式のアシスト装置のラインアップも見据える。

1kg分だけ腕を支える

タスキを上半身に装着する。腰に当たるパットと肩のベルトで重さを支える

 タスキは上半身に装着して使うパワーアシスト装置。腕を長時間上げる作業の際に1kg分だけアシストし、腕の重さを相殺する。製造業では、部品の組み付けや組み立て作業、上向きで電動工具や溶接機具を扱う作業などで用途を見込む。
 また製造業だけでなく、建設業や農業分野など計10事業者と実証実験を進めている。

 販売価格は税抜き11万5000円。予約数が最低ロット数の100件ほどに達したら、本格的に製造と販売を始める。予約はソラリスの公式サイトで受け付ける。

ソラリスの中村太郎社長(右)と山田泰之最高技術責任者

 タスキの開発コンセプトは「最低限のアシスト力を低価格で多くの人に提供する」こと。肩よりも上に腕を上げ続ける際の腕の重さを支える機能に特化した。
 人間の腕の重さは2~4kg程度。支える力が強いと腕を下げる動きなどの妨げとなるため、1kg分だけアシストする。部品の組み付けや工具の操作など、作業に必要な力は装着者の自力となる。

 ばねを使った独自の機構で腕を支える力を生み出す。モーターなどのアクチュエーター(エネルギーを運動に変える機器)がなく、バッテリーなどの電源が要らない。重量は2.2kgに抑えた。急な雨などで濡れる恐れがある屋外でも使える。

アシスト装置への恐怖心を拭い去る

アシスト力を生む駆動部には、ばねを使った独自の機構を搭載

 開発者の山田泰之最高技術責任者(CTO)は「アシスト装置の多くは『いかにも機械』という見た目で、装着すると重く、出力が大きいために操られるような感覚を抱く。恐怖心を持つ人は少なくない。タスキは気楽に使ってもらえるように工夫した」と話す。

 今後は量産化や素材の見直しで、さらに価格を下げたり、より軽量な装置を目指す。また、支える力の強さは駆動部のばねで調整できるため、用途や顧客ニーズに応じて出力の違う複数機種の展開も視野に入れる。

重量は2.2kgで、片手で楽に持てる

 さらにその先には、アシスト部位やアシスト方式が異なる装置にまでラインアップを拡充する構想もある。
 山田CTOは「パワーアシスト装置は、アクチュエーター搭載の有無で2パターンに分かれ、さらに腕向けの上半身用か、腰や足向けの下半身用で分かれ、4種類に分類できる。今回は『アクチュエーターなしの上半身用』。ここで培った知見を、アクチュエーター付きや足腰用の装置にも応用できれば」と、将来を見据える。

 またソラリスは、今回発売したパワーアシスト装置とは別に、独自開発の空気圧で駆動する人工筋肉型アクチュエーターを事業の柱に据える。アシスト装置にもそのアクチュエーターを応用できれば、相乗効果が見込める。

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