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2021.03.29

[ロボへの道も一歩からCase.1-⑫(最終回)]ロボットのある日常へ/サンエース編

「ロボへの道も一歩からCase.1」は2020年8月末、ロボットの導入を検討するサンエース(岐阜県各務原市、藤田斉社長)へ訪問し、導入する目的を聞くところから始まった。もちろんロボットもまだ購入していなかった。サンエースも記者も何が起こるか分からない中、手探りで取材を進めて約7カ月。昨年末にロボットを導入し、ようやくロボットシステムが形になった。そして今回の12話目で、ついにケース1は最終回を迎える。

一歩を踏み出したサンエース

【前回までのあらすじ】
水栓金具の組み立てや検査をするサンエースは、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)に頼らずにロボットシステムの導入を進めた。目的は配管に使う鋳物部品「エルボ」の検査工程の自動化だ。昨年末にロボットを導入し、ハンドや、ストッカー(エルボを入れる箱)を置く昇降台、検査機などを設置。プログラムを組んで、実際の作業と同じ動きをロボットにさせることに成功した。

検査を自動化するためのロボットシステム

「最初にお邪魔した頃は『SIerの力も借りるかも』という話もありましたけど、ここまできましたね」(記者)

「素直に『すごい』と思います。斉藤さんとは長い付き合いなので、本人が『やる』と言ったら、最後までやりきることは知ってました。糠谷さんもロボットの計画に参画してくれ、スキルを身に付けてくれました。本当にいい経験になりました」(藤田社長)

「機械を触れて、物を作れる人も入れてもらえると、もっと楽になるんですけどね」(斉藤さん)
 品質管理の糠谷さんも作業を手伝うが、製造に携わっていたわけではないため、工作機械を使ってハンドなどの部品を作ることはできない。

「ですよねー。でも、こういう物(ハンド)を作れる人は、なかなかいないんですよ」(藤田社長)

「未経験者にいきなり全てを伝承するのは難しい」と話す藤田社長(左)と斉藤さん

「設計含め自分の持ってる技術全てを教えたいんですけどね」(斉藤さん)

「未経験の人にそれを教えても難しいです。斉藤さんもここまで来るのに、いろんな事を手掛けて身に付けて、50年かけてますからね」(藤田社長)

50年培った斉藤さんのノウハウがロボットシステムに生かされる

 ハンドなどの機器の製作やシステム全体の構想はノウハウの領域で簡単に教えられるものでもない。でも、できるところから少しずつ伝承するという。ロボットに触れることで、イメージが湧くようにする。そうすることで「ロボットをどう使うか」などの発想の幅を広げることができる。また、SIerやロボットメーカーに今後、依頼する必要が生じた時、丸投げではなく、どこの部分をどのようにお願いしたいか、焦点を絞って依頼できる。

 いろいろな人がロボットに触れ、考えられるようになれば、もしかしたら毎年、ロボットを増やしていくこともできるかも。

まだ課題も多いが、一安心できる段階に

「まだ今のロボットシステムが完成したわけではないですけどね」(記者)

「ハンドの電源などをつなげば、ある程度は問題なく動きます」(斉藤さん)

「これまではロボットの動きだけでしたが、ようやく全体を試せる段階まで来ました。そこでどんな課題が出るのかを見たいですね」(藤田社長)

 ロボットがストッカーからエルボを取り、検査機にセットして、検査後に取り出す。この一通りの動きをロボットにさせることには成功した。ただし、検査機とロボットはまだ連動できていない。これから問題も多く起こるだろう。昇降台とロボットを連動させるのもまだ先になる。
 しかし、ストッカー1段分の作業の自動化だけなら、実際に現場で活躍する日も近い。もうすぐロボットが工場で活躍する日常が始まる。
 その一歩を踏み出した。

水栓金具の組み立てや検査をするサンエース

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