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2021.05.27

[特集FOOMA JAPAN2021 vol.6]食の全領域で自動化に貢献/イシダ

商品を一定量ごとに包装するために、大きさや形状がばらばらな商品から最適な組み合わせを瞬時に判別する、組み合わせ計量機。1972年に世界初の組み合わせ計量機を開発し、食品包装の世界でいち早く自動化を実現したのがイシダだ。以来、精密な「はかり」の技術をコアとして、計量や包装、検査など食品製造業界の幅広い分野で自動化に取り組んできた。FOOMA JAPAN(国際食品工業展)2021では、自動化の範囲をより広げた新製品を多数出展する。「新型コロナウイルス禍でも製品開発を継続してきた成果を見ていただきたい」と商品企画二課の河村涼一課長は語る。

食品業界の全領域をカバー

「食品の計量、包装、検査が主力」と話す河村課長

 イシダは食品の産地から製造、加工、物流、小売りの全領域をカバーするのが強みだ。1972年に開発した組み合わせ計量機で食品包装の自動化を実現。装置の利便性はもちろん、組み合わせ計量の考え方そのものが世界にインパクトを与えた。現在では、デパートの総菜コーナーで計量と値付けを同時にするはかりなど、食品業界のあらゆる場面で同社の製品を見ることができる。

 働き手の不足は食品業界でも深刻化している。コア技術である「はかり」の技術を生かして自動化の領域を少しずつ広げてきた同社にとって、現状は好機だ。商品企画二課の河村涼一課長は「新しい設備が必要になるだけでなく、更新しなければならない設備もあるだろう」と話す。

 また、食品衛生法の改正により、今年6月にHACCP(ハサップ)導入が完全義務化されることも、設備メーカーにとっては追い風になる。ハサップとは食品製造の衛生管理の手法のことで、消費者にとって健康被害の防止に役立つ。温度管理や時間の記録、異物検査を連続的に実施するため、対応した設備やソフトウエアが求められる。

 既存の計量技術に機械のからくりやIT技術を組み合わせて自動化を進めている。「例えば弁当の製造ラインなど人手に頼っている食品製造現場はまだ多く、自動化のニーズは間違いなくある。ただ、産業用ロボットを組み合わせるのは技術的に困難で、開発に取り組んでいる最中だ」と言う。

コロナ禍でも開発の手は緩めず

FOOMA JAPAN2019の同社展示のハイライト

 昨年からのコロナ禍で人の移動が制限され、売り上げや営業活動への影響が大きいが、食品工場は動き続ける。巣ごもり需要などもあり、食品へのニーズや需要はむしろ高まっている。
 「コロナ禍でも製品開発は続けてきた」と河村課長。昨年はほとんどの展示会が中止となったため実機を披露することはできなかったが、ウェブ展示会で新製品の発表やウェブセミナー(ウェビナー)を実施した。「ウェブ展示会は新規顧客の開拓には課題があるが、既存顧客向けの新製品のPRには効果がある。今後は現実の展示会とウェブ展示会の両方をうまく活用したい」と話す。

 FOOMA JAPAN2021は、ほぼ2年ぶりとなるウェブ開催ではない展示会。河村課長も「2年分の新製品を実機で披露したい」とPRに力が入る。展示のテーマは3つ。①環境対応②フードロス削減③安全と安心――を掲げ、多くの新製品を出展する。入口と出口にゲートを設けてブース内の滞在人数を把握し、移動方向を一方通行にすることで、人の密度が高まり過ぎないように配慮する予定だ。

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