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2021.06.18

爪交換パッケージシステムを開発! SIer事業を本格化/松本機械工業

工作機械の周辺機器メーカー、松本機械工業(金沢市、松本要社長)がロボットシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)事業に本格的に乗り出した。2020年10月にプロジェクトチームを発足し、チャック(複数の爪で被加工物を固定する工作機械用機器)の爪交換やワーク(被加工物)の脱着作業を自動化するパッケージシステム「All In One(AIO、オールインワン)」を開発した。

導入や立ち上げを簡単に

最大可搬質量16kgのロボットを使った「AIO16」のイメージ

 松本機械工業は変種変量生産の自動化ニーズに応えるため、ロボットを使ったチャックの爪交換の自動化システムを18年ごろから本格的に提案し始めた。
 従来は外部のSIerと協業しながら、顧客の要望に個別で対応していたが、非常に多くの工数がかかっていた。
 
 そこで同社は、導入や立ち上げが簡単なパッケージシステムとしてAIOを開発した。爪を一つずつロボットで交換する「ROBO(ロボ)-QJC」をベースとし、爪交換とワークの脱着作業を自動化する。爪とワークがセットで収納された定形のトレーが複数あり、ロボットが順番にトレー内の爪やワークを工作機械に供給することで長時間の無人稼働を実現できる。

松本要社長(中央)と桑本正信営業本部長(右)、奥野直起開発部次長

 使い勝手の良さも特徴だ。
 工作機械とワークの受け渡しの部分だけはユーザー側でロボットのティーチング(動作を覚えさせること)をする必要があるが、それ以外の基本的なプログラムは全て同社が事前に作成して納入する。

 また、ロボットが稼働している最中でも安全にトレーの交換ができ、段取り替え(セッティングの変更)の効率も高い。
 ファナックやオークマ製の制御装置に対応できるのも売りで、桑本正信営業本部長は「複数の異なるメーカーの工作機械と組み合わせて使用でき、AIOは小回りが利く」と強調する。

3年後には年30台以上

「SIer事業は既存事業と関連性があり、相乗効果が発揮できる」と松本社長

 同社はAIOの開発を機に、SIer事業にも本格的に乗り出した。
 AIOを含めた爪交換の自動化システムの構築やその要素技術の新規開発を強化するため、各部署から約20人を集め、20年10月にプロジェクトチームを発足。20年時点では一桁台だったロボットを扱える人材も、今では11人にまで増やした。

 松本社長は「新型コロナウイルス禍はわが社の経営に打撃を与えたが、新規事業に挑戦する良い機会でもあった。既存事業との関連性があり、相乗効果が発揮できると期待し、SIer事業に本格的に取り組み始めた」と説明する。

高松機械工業の複合旋盤「XT-8MY」と組み合わせたデモ(提供)

 AIOのターゲットは、変種変量生産を手掛ける金属加工会社。
 本来なら、21年5月20日~22日に金沢市で開催される展示会「MEX金沢2021」で初披露し、工作機械メーカーの高松機械工業製の複合旋盤「XT-8MY」とAIOを組み合わせて爪交換やワークの脱着を実演する予定だった。コロナ禍でMEX金沢2021は中止されたが、ウェブページや動画などで引き続きAIOのPR活動に取り組む。

 今後はAIOのラインアップ拡充を視野に、プロジェクトチームが主体となって技術開発を進める考えだ。桑本本部長は「1年後にはSIer事業を軌道に乗せたい。3年後には開発やサービスの体制も整え、AIOを年間で30台以上販売できれば」と展望を語る。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)



※この記事の再編集版は、設備財や工場自動化(ファクトリーオートメーション=FA)の専門誌「月刊生産財マーケティング」2021年5月号でもお読みいただけます。

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関連記事:チャックの爪の交換はロボットに【後編】/松本機械工業

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