ABBがAMR大手を買収
製造から物流までソリューションを拡大
ABBはスペインの有力AMRメーカー、アスティを買収すると7月20日に開いたオンライン会見で発表した。会見前日となる7月19日に両者は買収の合意に達した。買収金額は非公表。今夏中に契約を締結する予定だ。
アスティは1982年創業のAMRメーカーで従業員数はおよそ300人。スペインの他、フランス、ドイツ、米国にも拠点を持つ。同社の製品は世界20カ国の自動車産業、物流、食品産業、医療関連などの現場で幅広く使われている。同社は2015年以降、年率およそ30%の成長を続けており、今年の売上高は約55億円に達すると見込まれる。買収後も引き続き、ベロニカ・パスクアル・ボエ最高経営責任者(CEO)が同事業の指揮を執る。
ABBのロボット事業を統括するサミ・アティヤ社長はアスティを「包括的なソフトウエア群に加えて、成長分野における深い知識を持つ企業」と高く評価。「顧客に次世代型のフレキシブルな自動化システムを提供するわが社にとって、まさに完璧な選択」と今回の買収の意義を強調する。
買収後もアスティの本部は引き続きスペインのブルゴスに置かれ、同拠点は主に欧米市場に対応する。一方、急伸するアジア需要に対応するため、ABBは同社の上海工場内にアスティのアジア向けハブ拠点を2022年に開設する。
ABBのロボット事業はこれまでアーム型の産業用ロボットに特化しており、AMRがラインアップに加わるのは初めてのこと。同社は近年、企業買収を成長戦略の一環として重視している。AMRがラインアップに加わることで、同社が提供できるソリューションが生産現場から物流領域まで一気に拡大することになる。
アティヤ社長は「顧客は今後もっと“つながる”ことを望むようになる。ロボットによって各工程がセル単位で自動化されるだけでなく、今後はセル同士がAMRによってつながる。生産現場内の全ての工程フローが完全に自動化されてフレキシブルにつながるようになるだろう」と見通す。
(ロボットダイジェスト編集長 八角秀)