ロボット業界で活躍する女性にスポットを当てた連載「活躍するロボジョ」。８回目はスイスのロボットメーカーABBの日本法人（東京都品川区、中島秀一郎社長）で、パラレルリンクロボットのシステム納入のプロジェクト管理を担う石川幸佳さんを紹介する。顧客とシステムインテグレーター（SIer、エスアイアー）の間に立ち、納期やコストを管理する。「お客さまに満足度の高いシステムをお届けしたい。そのためには、お客さまとSIer双方に納得していただきながら進めることが大事」と話すように、コミュニケーション能力を生かし、両者の意見を上手くくみ取りながら最適解を探る。

　入社７年目の石川さんは、三品産業（食品・化粧品・医薬品）向けのパラレルリンク・ロボット・システムのプロジェクト管理の業務を担う。

　ロボットシステムは通常、仕様決めや構想設計、詳細設計、組み立て、調整などを経て顧客の現場に納入される。実作業はSIerが担うケースが多く、石川さんは顧客とSIerの間に立ってプロジェクトの全体的な進行管理や納期管理、コスト管理に取り組む。

　三品産業ではまだロボットが十分に普及しておらず、ユーザーはロボットに対して過大な期待を抱くケースが多いという。「お客さまがロボットで何を実現したいのかを正しく理解した上で、ロボットシステムでできることやSIer側の提案とすり合わせてプロジェクトを進めることが重要」と語る。

　コストやシステムの内容で、顧客とSIerの要望や提案が食い違う場合もある。「双方が納得できるように、提案と調整を丁寧に繰り返していくことが大切だと考えています」と話す通り、両者の意見を上手くくみ取りながら最適解を探っている。

　以前はパラレルリンクロボットのエンジニアとして働いていた。１年半の育児休業から復帰した昨年、現在のパラレルリンク・ロボット・システムのプロジェクト管理をする業務に就いた。パラレルリンクロボットの技術知識は持っていたが、コンベヤーやシリンダーなどの周辺機器関連の知識が少なく、初めは苦労したという。

　「お客さまの質問にすぐにお答えできず、悔しい思いもしました」と石川さん。しかし、会社の同僚やSIerから教わった情報を資料にまとめるなどして、徐々にロボットシステムの知識を蓄えた。

　村山雅成事業開発＆マーケティング・コミュニケーションズマネージャーは「ムードメーカーであり、問題解決能力も高いので、お客さまからの信頼も厚い」と評価する。

　大学では都市計画について学んだ。就職活動では、ワーク・ライフ・バランスと自身の性格にあった会社を探し、たまたまABBに巡り合った。「枠にとらわれず、幅広い考えを持った人が多かったです。こうした環境で挑戦したいと思って入社を決めました」と話す。

　「入社前は、産業用ロボットの知識も、ロボットへの興味もありませんでした」と笑う。新人研修の一環で、社内のさまざまな部門で仕事を経験した際に、塗装ロボットのプログラミングやティーチング（ロボットに動作を覚えさせること）などを経験した。地道な作業ではあったが、自身でティーチングしたロボットが装置の中の一部として稼働する様子に引かれた。この経験が強く印象に残り、後に異動願いを出した。

　自身の性格を「物事をはっきり言う性格」と分析する。米国に住んでいた経験があり、英語も堪能だ。

　石川さんはユーザーやSIer向けのトレーニングにも携わり、日本のABBのトレーニングの充実を目指して、ABBの世界各国のチームと一緒にトレーニング教材の開発にも加わる。得意の語学力とコミュニケーション能力、そして物おじしない性格を生かし、海外のチームメンバーとも活発に意見交換をしている。

　「入社当時から目標に掲げる、目の前の仕事を着実にこなすことを今後も大事したい。確実な仕事をし、お客さまや会社に貢献できればうれしいです」と語る。

　プライベートでは１歳の娘を持つ一児の母だ。カメラが趣味で、娘の日々の成長を記録する。イベントを計画、実施するもの好きで、「娘の２歳の誕生日には、衣装やケーキなどを一からプロデュースして誕生日会を開く計画をしています」と笑顔で話す。

（ロボットダイジェスト編集部　鷲見咲美）