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2022.02.03

相次ぐ新規参入、AI×ロボットで抜群の汎用性【前編】/兼松

「人工の腕・手」である産業用ロボットと、「人工の知能」であるAIの相性は抜群だ。この2つを組み合わせれば、幅広い作業を柔軟にこなせる汎用性の高いシステムを構築できる。新規参入が相次ぐ「AI×ロボット」。その最新事例として、前編では総合商社の兼松のAI外観検査システムを取り上げる。

7人が1~2人に

外観検査をAIで自動化するアイぺネット

 兼松がAIを活用して提案するのが、外観検査の自動化だ。同社は新規事業の開発を検討する中でAIに着目。その用途を検討する過程で、幅広い事業を展開する総合商社ならではの強みを生かし、さまざまな産業の課題をヒアリングした。その結果、多くの産業に共通するニーズが外観検査の自動化だった。

 「例えば兼松ではインスタントコーヒーを扱うが、ラベルの剝がれや賞味期限の印字不良がないかなど受け入れ時に目視で検査していた。工業製品から食品まで、あらゆる産業に外観検査工程はあり、自動化のニーズは大きい」と電子・デバイス部門新事業創造課の稲岡崇課長は言う。

カメラの前に対象物をかざして検査する

 商社ならではのネットワークで、従来よりも少ない画像の枚数で十分な機械学習ができる技術を持つAIベンチャー企業とタッグを組み、外観検査システムを開発。昨年の2月から、社内で試験的に運用を開始した。
 ロボットが検査対象物を箱から取り出し、カメラの前にかざしながら回転させて検査する。問題がなければ箱に戻し、万が一不良品があれば、あらかじめストックしてある良品と入れ替えてから次の出荷工程に流す。ロボットが目の前のボタンを押すと、次の箱がコンベヤーでロボットの前に流れてくる仕組みだ。

「人とロボットの共存を目指した」と稲岡崇課長

 コンベヤーに検査前の箱をセットする人員などが必要で、「あえて完全自動化は目指さなかった。目指すのは『人とロボットの共存』で、自動化による作業者の負荷軽減や作業精度の安定化は重要だが、現場には人がいるほうがいい」と稲岡課長は言う。
 社内での試験運用では、これまで7人でしていた受け入れ検査の工程を、1~2人に減らすことができた。

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