工作機械と同じ感覚で扱えるロボット加工機を開発/桜井製作所
三菱電機と共同開発
「ロボマジック SAKU270」は、ドイツのKUKA(クカ)製の270kg可搬の大型多関節ロボットを使った切削加工機だ。
最大の特徴は三菱電機と共同開発したNC装置にあり、ロボットをNCプログラムで制御できる。ロボットを動かすには通常、ティーチングペンダントなどを使用してティーチング(動作を覚えさせること)作業をしなければならない。これに対し、桜井製作所の坂下昌史執行役員工機部長は「ロボマジックは、加工現場のオペレーターが日頃から使い慣れているマシニングセンタ(MC、広く普及している工作機械の一種)と同じ感覚でロボットを扱えるのが一番の売り」と強調する。
NCプログラムを変更するだけで多品種のワークを加工できる上、CAM(コンピューター支援製造ソフトウエア)で作成したNCプログラムを利用すれば自由曲面などの複雑形状にも対応できる。
ロボマジックには、自社設計の主軸をロボットアームの先端に搭載。最高回転数は毎分1万5000回転で、内部給油仕様を取り入れ環境にも配慮した。切削工具用のマガジンラックも設け、ロボットが切削工具を交換しながら穴開けなどの加工を担う。ワークの形状に合わせて最長10mまでの走行軸も搭載でき、長尺物の加工にも力を発揮する。
門形MCの約半分のコスト、スペース
ロボマジックの主なターゲットは、EVのバッテリーケースや洋上風力発電関連の部品などの1mを超える長尺ワークだ。坂下執行役員は「切削能力的には小型MCでも十分加工ができるのに、サイズの関係で大型の門形MCを使わなければならないワークもある。こうしたニッチな需要をロボマジックで取り込みたい」と意気込む。
ロボマジックは一般的な門形MCに比べて構造がシンプルなため、導入コストや設置スペースを約半分に抑えられるという。
正式発売は来年春を予定しており、今後は加工精度の検証や、タッチプローブ(接触式センサー)対応などの機能開発に取り組む考えだ。
11月8日~13日にかけて東京都江東区の東京ビッグサイトで開催される工作機械展「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」にも出展し、顧客ニーズの掘り起こしも進める。「将来的には加工内容に合わせて主軸やロボットのバリエーションを拡充し、ロボマジックのシリーズ展開を図りたい」と坂下執行役員は話す。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)