ロボット、AGV・AMRに注目集まる/名古屋ものづくりワールド2023
食品や花をつぶさず搬送
「ものづくりワールド」は製造業の専門展で年に3回、東名阪でそれぞれ開かれる。
今回の名古屋ものづくりワールドは「第8回名古屋機械要素技術展」など計9つの専門展からなり、人手不足や生産性向上、デジタル活用、環境対応といった製造業が抱える各種課題を解決するソリューションが一堂に展示された。会期3日間で2万7500人が来場した。
会場では、ロボットシステムの展示が目立った。
商社でありながらシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)として自動化システムの設計や製作も担う常盤産業(名古屋市中区、清水英敦社長)は、台湾のテックマンロボットの協働ロボットにFingerVision(フィンガービジョン、東京都文京区、濃野友紀社長)のロボットハンドを装着したデモシステムを展示した。バラの花を器用につかんで搬送する動作デモに多くの注目が集まった。
フィンガービジョンは、画像情報をベースに触覚を再現する技術に強みを持つベンチャー企業。ロボットハンドに内蔵したカメラと独自の画像処理ソフトウエアを生かし、滑りや力の分布を検知する。物体をつかんだ時の滑り量を基に最適な力加減をコントロールでき、軟らかい食品や花でもつぶさずに搬送できる。濃野社長は「対象物が変わっても握り方を柔軟にコントロールできるため、汎用性が高いのが特徴」と語る。
工程間搬送の自動化を提案
製造業では近年、工程間搬送などの工場内物流の自動化ニーズが高まっている。会場ではこうした課題に応えるAGVやAMRの展示も脚光を浴びた。
知能ロボットコントローラーを開発、販売するMujin(ムジン、東京都江東区、滝野一征最高経営責任者)は、床面に貼り付けた2次元バーコード(QRコード)を読み取って走行する「QRグリッド式」のAGVを出展。AGVを展示のメインに据えたのは今回が初で、会期を通じて製造現場の工程間搬送の自動化提案に力を注いだ。
同社のAGVは90度旋回ができるため走行に必要なスペースを最小化できる上、専用の制御ソフトウエアで複数台を同時にコントロールする「群制御」も可能だ。床面にQRコードを貼るだけなのでレイアウト変更にも対応しやすい。溝や段差、勾配があっても走行できる。「製造業のお客さまの厳しい要望に応えるため、AGVのサポート体制を数年かけて構築してきた。昨年には名古屋市西区の名古屋営業所を移転拡張し、中部地区のお客さまへのサポート体制もさらに強化した。実機展示だけではなく、こうしたサポート体制もアピールしたい」と広報担当者は述べる。
機械要素部品メーカーのTHKは搬送ロボット「SIGNAS(シグナス)」を提案した。シグナスに内蔵されたカメラが「サインポスト」と呼ばれる目印を認識し、そのサインの種類に合わせて事前に設定した通りにシグナスが前進したり、停止したりする仕組みだ。担当者は「AGVやAMRを使った搬送の自動化は製造業でもトレンドになりつつある。シグナスの引き合いも増加傾向にある」と語る。
また、「ASPINA(アスピナ)」ブランドで事業を展開するシナノケンシ(長野県上田市、金子元昭社長)は2爪や3爪の電動ロボットハンドや、製造現場向けのAMR「Aspina(アスピナ)AMR」など、ロボット関連製品を一堂に展示した。3爪電動ロボットハンドを装着したカワダロボティクス(東京都台東区、川田忠裕社長)の人型協働ロボット「NEXTAGE Fillie(ネクステージ・フィリー)」がハンカチを器用に折り畳むデモや、アスピナAMRがケースを搬送するデモを披露し、来場者の注目を集めた。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)