力覚センサー参入から5年、カスタマイズで差別化狙う/新東工業
高い検出精度や分解能
新東工業のジクサーはX、Y、Zの直線3軸の荷重と各軸周りのモーメント(回転させる力)の計6軸を同時に検出するひずみゲージ式の力覚センサーで、愛知県新城市の新城事業所で2020年4月から生産を開始した。
ひずみゲージ式とは、「起歪(きわい)体」と呼ばれる金属板に外力が加わった時に生じる変形量を基に力やモーメントを計測する方式で、スマートフォンのタッチパネルなどに利用される静電容量式と比べて検出精度や分解能が高いのが特徴だ。ロボットアームの先端にジクサーを装着すれば微妙な力加減を検出できるようになるため、これまで自動化が難しかった手作業もロボットに置き換えられる。
力覚センサ事業グループの田名網克周グループマネージャーは「力覚センサーは小さな力も検出できるので、予期せぬ接触によるロボットハンドや搬送対象物の損傷を防止できる。また、各軸にかかった力やモーメントをデータとして残せるため、不具合があった際のトレーサビリティー(追跡可能性)も確保しやすい」と説明する。
パッケージシステムの開発にも注力
同社は19年2月に力覚センサーの事業に参入すると発表して以来、熟練者の精密な手作業の自動化を目指してジクサーのラインアップを順次拡大してきた。定格容量±500N(ニュートン)~±9000Nまでの計11モデルに加え、2系統へのデータ出力が可能な「ダブル出力モデル」や、配線や配管を中央の空間に格納できる「中空モデル」もそろえた。カタログ品だけではなく、オーダーメード品の製作にも対応する。
また、ジクサーを中核としたパッケージ仕様のロボットシステムの開発にも力を注ぐ。現在はFPCの挿入作業や、ばらばらに積まれた部品のピッキング、歯車同士の組み付け、シャフト部品を高精度に挿入する嵌合(かんごう)作業といった4種類の主要なアプリケーション向けにパッケージシステムを販売する。
「この5年間で製品のバリエーションが広がり、主要なロボットメーカーからの認知度も高まった。問い合わせや引き合いの件数も着実に増加した」と田名網グループマネージャーは述べる。
ロボット以外の分野にも
ひずみゲージ式は力覚センサーの中では主流で、この検出方式を取り入れた競合製品も多い。これに対し、田名網グループマネージャーは「競合は標準品の販売がメインだが、わが社は標準品だけではなくお客さまのニーズに合わせた特注品の提供にも力を入れている。今後も小回りを生かしたカスタマイズ対応で差別化を狙いたい」と語る。
同社はこれまでに、Z軸方向の定格容量が1万4000Nと1t以上の荷重を検出する超大型モデルや、最小の定格容量が0.005Nとわずか0.5gの荷重の違いを検出する超高精度モデルなどの特注品を製作した実績がある。
「力覚センサーの事業をさらに拡大させるためにも、多岐にわたるお客さまのニーズにより迅速に対応できる体制を整備したい」と田名網グループマネージャーは意気込む。
また、近年はロボット以外の分野にも、ジクサーで培った技術やノウハウを応用している。その最たる例が人の重心移動を計測する「フォースプレート」だ。力覚センサーが内蔵された板の上に人が乗ることで重心の動きを検出できるもので、同社はスポーツやリハビリテーションの分野などへの拡販を見据える。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)