[連載コラム:いまさら聞けないキーワード]vol.05 ティーチレス
ティーチング作業が不要でもプログラムが不要になる訳ではないので、何らかの方法でプログラムを作成し入力する必要があります。
従来のティーチング作業にはティーチングペンダントを使うオンラインティーチングと、パソコンでプログラムの大部分を完成させるオフラインティーチングがあり、ペンダントで微調整をする場面は今も多くあります。その他にダイレクトティーチングがあります。簡単に言えば、ロボットを人の手で動かし、その軌跡をプログラムに変換する手法です。プログラムの専門知識がなくてもティーチングできるのがメリットで、技術の進歩とともに、ティーチングの難易度が下がってきたといえます。
ティーチレスにする方法はいくつかあります。各種センサーを使う方法がその一つ。センサーで物を認識し、微妙な違いに合わせてプログラムを自動で微調整させることで、ティーチングを最小限にできます。が、完全なティーチレスではなく、あくまで微調整の範囲にとどまるものが多いです。現時点では人工知能(AI)がプログラムを生成するタイプがティーチレスに近いでしょう。
AIが組み込まれたティーチレスロボットは、作業内容に応じて基本となるプログラムは必要ですが、現場の環境に応じて自らプログラムを生成します。例えば、飲食店で見習いスタッフに皿洗いを任せる時に、「皿を洗ってトレーに並べるように」といった指示は必要ですが、皿の持ち方や洗い方まで指示する必要がないようなものです。
逆に言えば、従来のロボットは皿の持ち方や洗い方、並べ方を事細かに指示しなければなりませんでした。ティーチングには相応の専門知識が必要なため、エンジニアのいる製造現場はともかく、飲食店や小売店などではとても対応できません。これが長らくロボット導入のハードルの一つとなり、製造現場以外で普及が進まない要因の一つです。
最近ではAIの使い方自体も大きく変わりつつあり、対話型AIサービス「Chat(チャット)GPT」を利用することで、自然な言語を用いてプログラムを生成できることも実証されました。ティーチレスがさらに進歩し、家電を扱うようにロボットを使えるようになった時には、ロボットは爆発的に普及するでしょう。