[エディターズノートvol.5]環境の時代に
環境の時代――、こう書くと二酸化炭素の排出削減などを思い浮かべる人が多そうだが、今回テーマにしたいのはいわゆる「環境問題」ではない。「ロボットの稼働環境」の話だ。
近年、ロボットの稼働環境への関心が高まっている。大きなきっかけの一つが、経済産業省による“ロボットフレンドリー(ロボフレ)”の提唱だろう。ロボットの飛躍的な普及には、稼働しやすい環境の整備が不可欠との考え方だ。ロボットが稼働しやすい建物や食品製造現場の仕様などを検討し、業界標準化を図る。
ロボフレの取り組みに関しては、ロボットダイジェストでもこれまで度々取り上げてきた。
・人材・技術・環境、ロボ普及へ施策出そろう【その1】/経済産業省 石井孝裕ロボット政策室長
・惣菜製造に一石投じる! 唐揚げやポテサラ用ロボ本格導入へ/日本惣菜協会ほか
・[進化する物流vol.16]ロボットとエレベーターが連携、ロボフレの事業成果を発表/経済産業省、ロボットフレンドリー施設推進機構
物流分野で進む取り組み
ロボットの普及促進を直接目的とするものではないが、他の省庁でも、ロボットの稼働環境に影響を与える施策が進められている。
国土交通省では、「官民物流標準化懇談会」を開き、物流に関する各種仕様の標準化を進めている。6月28日には、他のテーマに先行して検討してきたパレット(荷役台)の標準化について、同会のパレット標準化推進分科会が「最終とりまとめ」を公表した。
パレットは物流の効率化に欠かせない資材だが、1100mm×800mmや1400mm×1100mm、1200mm× 800mmなど多種多様なサイズの製品が流通している。この現状に対し、同分科会では1100mm×1100mmの通称「11型」と呼ばれるサイズを標準とすることを決定。2030年度までに、現状26%の11型の生産比率を、50%以上に高める方針を掲げた。
パレットのサイズが変われば、ロボットパレタイズ/デパレタイズシステムの仕様も変わってくる。パレットの標準化が進めばロボットで作業しやすくなり、ロボットシステムの導入機運の向上も期待できる。無人搬送フォークリフト(AGF)などの自動化機器も活用しやすくなりそうだ。
物流効率化のため、物流業界ではパレット以外にもいくつもの事項について標準化が検討されている。また、他業界でも人手不足は深刻で、物流業界と同様に、仕様の共通化を図ることで業務の効率性を高めようとの動きが出てくることもあるだろう。
さまざまな分野で検討される標準化は、ロボット産業にとって大きなビジネスチャンスとなり得る。環境問題ももちろん重要だが、これからは「ロボットの稼働環境」にも注目だ。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
※「エディターズノート」はロボットダイジェストの編集後記として毎月の最終平日に掲載しています。
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