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2022.03.22

[国際ロボット展 特別リポートvol.11]THKが見据える、自動化普及の「次の段階」

THKは「2022国際ロボット展(iREX2022)」の会場で、新製品の回転モジュール「RMR」を発表した。ロボットの関節用のモジュール(機能に必要な要素をまとめた複合部品)だ。一見すると、要素部品を組み合わせてモジュールにしただけに思えるが、星野京延常務執行役員は「自動化システムの『次の段階』を見据えた戦略的製品」と話す。

大きさは3種類

左からRMR50、RMR30、RMR10

 回転モジュールの「RMR」は、モーターや減速機、ブレーキ、回転位置を検出するエンコーダーを一体化した製品だ。サイズは3種類。定格トルクの大きさを下2ケタの型番にした「RMR10」、「RMR30」、「RMR50」をラインアップする。

 従来、ロボットの関節部は、モーターや減速機などをそれぞれ購入し、ノウハウを持つエンジニアが組み立てなければならなかった。
 これらを一体化してモジュールとして提供することで、ロボット設計のノウハウを持たないエンジニアでも、複数の回転モジュールとリンク(関節と関節をつなぐ部分)を組み合わせて簡単にロボットを作れる。
 
 さらに、ロボットの設計自由度を高めるため、RMRにはさまざまな工夫を取り入れた。
 中心部に貫通穴のある中空構造で、各種ケーブルをロボット機内に配線できる。同社製の特殊な軸受けを使い、大きな負荷にも耐えられるようにした。また、動作用のドライバーを、あえてモジュールに組み込まずに小型にした。
 まずはロボットのシステム構築を手掛けるシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)や、自社でシステム構築できる規模の大手メーカーの生産技術部門などに提案する。

たどる道は直交軸と同じ?

1軸で販売されるTHKの「電動アクチュエータ」

 一見すると、要素部品を組み合わせてモジュールにしただけに思えるが、THKは同製品を今後の戦略的な製品の一つに掲げる。

 星野常務執行役員は「産業用ロボットの普及が進むと、6軸の回転軸を持つロボットでは過剰なスペックな作業を、少しだけ自動化したいニーズが出てくるはず。そのニーズを満たすには、自分に合ったロボットを簡単に自作できれば一番良い。直交ロボットがまさにそうだった」と話す。

 数十年前の直交ロボットは、2軸や3軸を組み合わせて1つのセットとして販売されるものが多かったという。
 しかし、現在では1つのモジュールとして、シリンダーのように1軸で対象物を押したり引いたりして搬送する用途がある。また、モジュールを組み合わせて、自動化機器を自作する人も少なくない。
 THKは多関節ロボットの普及が進むと、回転軸も同じ歴史をたどると考えている。

 特に「簡単な自動化設備に求められる稼働範囲は、導入時の作業イメージを付けやすい、人間の手の届く範囲と同じ」(星野常務執行役員)という。
 具体的には、横1000×奥行き600×高さ800mmの立方体の範囲だ。横長なこのスペースを自動化するには6軸の垂直多関節ロボットを置くよりも、直交軸と数個の回転軸を組み合わせる方がシンプルな構造にできる。

直交軸と回転軸の組み合わせも

直交軸と4軸の垂直多関節ロボットを組み合わせた構築例

 実際に会場では、SIer事業を手掛けるグループ企業、THKインテックス(東京都港区、植村元博社長)が構築したシステム例を展示した。

 その一つでは、直交軸と4軸の垂直多関節ロボットを組み合わせて、門型の搬送装置「ガントリーローダー」のように使った。この軸数だけでも、工作機械などの装置間の搬送や、料理店舗で調理を補助する用途には十分使えるという。

 星野常務執行役員は「少子化などで人から機械の置き換えがまだまだ進む中、部分的に自動化したい箇所は必ずある。そこに簡単に適用できるモジュールにしたい」と意気込む。

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)


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