生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2019.04.23

連載

[注目製品PickUp!vol.12]2m四方のサイズも‼ カスタマイズ自在な真空グリッパー【後編】/シュマルツ「SPZ/SSP」

ドイツの真空機器メーカー、シュマルツは昨年、自在にカスタマイズできる真空グリッパー「SPZ/SSP」を発売した。同社がユーザーの要望に合わせてカスタマイズして提供し、ロボット側の動作まで含めた総合的なエンジニアリングサービスも提供できる。日本法人のアーネ・ゲッテゲンス社長は「日本に着任以来、設計やシステム構築から携わるビジネスを目指していた」と言う。一見、メーカー側からすれば負担が増えそうなエンジニアリングサービス。同社が携わる意図とは。

SIerの負担を減らしたい

 SPZとSSPは、自在にカスタマイズできることが特徴の真空グリッパーだ。こうした製品は真空グリッパー業界初(同社調べ)という。
 一見、手離れが悪くメーカーの負担が増えそうな製品の発売に踏み切ったのはなぜか。ゲッテゲンス社長は「一番はシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の負担を減らしたかった」と意図を話す。

 現在、自動化や省人化のニーズが高いが、システム構築を担うSIerは不足している。しかも、SIerは顧客ごとに仕様の異なるシステムを構築する一品一様のビジネスモデルで、開発や設計に時間は掛かるが一般に収益性は決して高くはない。
 シュマルツは8000点以上の製品や部品を持つ。もし仮にSIerが真空グリッパーを使う判断をしても、用途に合わせた適切な製品を8000点の中から選んでシステムを構築するのは難しく、手間が掛かる。極論を言えば、それが原因で敬遠されてしまう。

「用途に合わせた最適なソリューションを提案したい」とアーネ・ゲッテゲンス社長

 そこでシュマルツの専任エンジニアが顧客の現場を訪れ、同社単独やSIerと協力しながらシステムを構築する事業を開始した。ゲッテゲンス社長は「メーカーならではの商品知識や活用ノウハウの豊富さを生かし、用途に合わせた最適なソリューションを提案したい」と意気込む。SIer不足によるロボットシステムの納期の長期化で、自動化に踏み切れなかった顧客にも提案がしやすくなる。

テストルームに大型ロボも設置

テストルームを備えた横浜本社の外観

 昨年11月には横浜本社のテストルームに可搬質量500kgの大型ロボットを設置した。同社がテスト用に持つ真空グリッパーSPZは約200kgまで吸着できる仕様で、実演では5kgの段ボール箱15個を持ち上げる。
 吸着面をゾーン分けした制御で一部だけの吸着もでき、パレタイズやデパレタイズと呼ばれる箱の積み下ろし作業の際に、特定の段ボール箱だけを持ち上げることもできる。パレット(荷台)に箱を積むパレタイズの際には、パレット上の重量バランスを取るために配置の入れ替えが必要で、特にこの機能が重要になる。

テストルームでの実演

 テストルームでは、真空グリッパーの導入前に顧客立ち合いのもと、実際の対象物を使った動作確認ができる。「設置現場に近い状況を再現し、顧客に見てもらうことで導入前の不安を軽減する。テスト時に万が一不具合があっても即座に対応し、初期不良を減らしたい」(ゲッテゲンス社長)。
 そのおかげもあり、昨年の発売以来、SPZとSSPの吸着ミスなどのクレームは1件もないという。

TOP