「ロボットを超える」無人ピッキングシステムに脚光/伊東電機
現場に合ったシステムを構築
伊東電機は兵庫県加西市に本社を置き、物流システムやマテハン用機器などを製造、販売する。1946年の創業で、従業員数は314人だ。
コア技術は、モーターを内蔵したローラー(MDR)の「パワーモーラ24」。「MDR式マテハン」と銘打った、MDRを核としたローラー・コンベヤー・システムに強みを持つ。
ローラー・コンベヤー・システムは、MDRと、複数のローラーで構成したローラーモジュールで構成される。モジュールとはユニットのサイズや規格をそろえて自在に組み換えられるようにする設計手法を指す。
同社は直進や直角、斜めなどの平面的な移動ができるモジュールに加え、傾斜など上下方向に移動できるモジュールもそろえており、これらを自在に組み合わせて顧客の現場レイアウトに合ったシステムを構築する。
「一般的なローラーコンベヤーは、全てのローラーを1つのモーターで回転させて物を搬送するため、モーターは常に稼働しっ放しだ。一方、わが社のMDR式マテハンはモジュールごとに制御できるため、搬送中のモジュールのローラーだけ回転させるなど、省エネな運用ができる」と広報担当者は特徴を説明する。
最小限のエネルギーで搬送
2019年7月2日と3日の2日間には、愛知県刈谷市の多目的ホール「産業振興センター あいおいホール」でPSを開いた。
自動車産業の集積地での開催だけあり、自動車関連のメーカーなどを中心に、2日間で約600人が集まった。
PSでは強みのMDR式マテハンを中心に、最新の搬送システムなどを披露した。
中でも注目を集めたのは、MDR式マテハンの技術を応用した無人ピッキングシステム「TAPS(タップス)」だった。
TAPSとは「トレーマネジメント・オート・ピッキングシステム」の略で、トレーを使うことでサイズがばらばらで不定形な商品を定形化し、物流や配送現場でのオーダー集品やピッキングの工程を自動化するシステムだ。①商品の荷さばきとスキャニングをする機能「マジック・シンギュレーション・システム」②商品の入ったトレーを垂直方向に仕分けする機能「ヴァーティカル・ソーティング・システム」③入庫や出庫などの複合的な動作を同時に実施できる機能「オート・ケース・シーケンシング・システム」④オーダーに応じて荷合わせをする機能「マジック・オーダー・システム」――の4つで構成される。
PS会場では「ロボットを超えるロボット」をキャッチフレーズに掲げ、TAPSを大々的にアピールした。日用雑貨の配送センターをイメージした物流ラインを構築し、TAPSでピッキングから集荷までの一連の工程を自動化するデモを定期的に実施した。
「TAPSと一般的な垂直多関節ロボットを使ったパレタイジングシステムとでは、やれることやできることが違う。ロボットを使って商品を搬送する場合、商品だけではなくロボットアーム自体も動かす必要があり、大きなエネルギーを使う。これに対し、MDRの技術を活用したTAPSは、商品だけを最小限のエネルギーで搬送できる。見た目は全くロボットらしくないが、物流や配送現場の自動化や無人化に貢献できる」とグローバル経営戦略室の高永明執行役員統括部長は語る。
この他、1時間当たり6000ケースを処理できる高速仕分けシステム「MM-6000」や、モジュールを自在に組み合わせて簡単にラインの設計や変更ができるシステム「id PAC」なども展示した。
大阪市中央区の展示会場「マイドームおおさか」でも19年9月11日~13日の3日間にわたりPSを開催する予定だ。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)