[活躍するロボジョvol.5]コミュニケーションを大切に/豊電子工業 蘇文娜さん
チームプレーが何より重要
蘇さんはロボットシステムの電気設計を担当する。CAD(コンピューター設計支援)ソフトウエアを使い、機械やロボットの動きを制御する制御盤や内部の電気回路の配線図を設計する。
電気設計で担当するシステムの9割は、溶かしたアルミニウム合金を金型に流し込み、専用機で圧力をかけて成形するアルミダイカスト用のロボットシステムだ。一般的には、部品の取り出しや、離型剤(成形品を金型からスムーズに取り出せるように使う薬剤)の塗布、部品の端に生じる小さな突起を取る工程にそれぞれロボットが使われる。
「お客さまが思い描くシステムを理解して、仕様書に落とし込むのがとても難しいです。電気は機械とは違って目に見えず、なおさら苦労します」と話す。
調べ、考えることが好き
中国の河北省出身で、日本に親戚がいることから高校3年生の時に来日した。慣れない環境の中、語学学校で一から日本語を勉強し、愛知県春日井市の中部大学で電子工学を学んだ。
大学卒業後、素材メーカーで働いていた時に、顧客の工場で初めて産業用ロボットに出会った。「作業者がタッチパネルを操作するだけで、ロボットが動くのを見て驚きました。これからの製造現場では、ロボットが必須になると思いました」と振り返る。ロボットをどう動かすかに興味を持ち、SIer大手の豊電子工業に入社した。
最近は、自動車に搭載される鉛蓄電池の組み付けと検査を自動化するシステムも担当した。新しいプロジェクトだっただけに、今まで手掛けてきたアルミダイカストのシステムのノウハウだけでは対応できず、配線の仕方や設計の手順などを一から調べなければならなかった。
「学生のころから、じっくり考えて解答を導く理系の科目が好きでした。今回の新規プロジェクトでも、調べて、考えて、解釈することが楽しく、やりがいを感じました」と語る。
システムを構築する過程で、2台のモーターを破損させるミスもあった。ミスがどこで発生したのか調べるため、各工程の担当者と実物を見ながら問題点を探した。原因は単純な設計ミスで、配線に誤りがあった。
「担当者と常に連携することが大事だと改めて学びました。ロボットを安全に動かすために、確実に電気設計をすることが重要です」と話す。
中国の顧客との間を取り持つ
新型コロナウイルスの感染拡大で、同社のシステム調整の担当者が海外顧客の現場に出向くのが困難になった。代わりに、ウェブ会議システムで現地の顧客とつなぎ、遠隔で調整作業をする機会が増えた。
母国語が違う人に向けて、専門用語などを交えて説明するのは非常に難しい。そのため最近は、中国出身の蘇さんが通訳として間を取り持ち、顧客との円滑なやり取りをサポートしている。通常業務に加え、コロナ禍の影響で通訳の仕事も増えており、「今は忙しいですね」と笑う。
好奇心が旺盛で、ヨガや茶道など趣味を多く持つ。中学2年生の息子を持つ一児の母で、オフの時には家族でスノーボードを楽しむ。
(ロボットダイジェスト編集部 鷲見咲美)