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2021.07.21

「手軽な自動化」を安く、ロボパッケージ発売/ユアサ商事

ユアサ商事は7月、工作機械と組み合わせて使う自動化システム「Robo Combo MⅠ(ロボコンボエムワン)」を発売した。「安価で、設置も手軽。慣れればセッティングに1分もかからない」と機械エンジニアリング本部市場開発部の曽我吏司課長補佐は言う。MⅠはファナックの小型切削加工機「ロボドリル」向けだが、旋盤用などシリーズ展開の準備も進める。

簡単設置ですぐに稼働

ロボコンボは工作機械と組み合わせて使うロボットシステム

 ロボコンボは、ロボットを搭載したセルと、ワーク(加工対象物)ストッカーからなるロボットシステムだ。開発したのは、ユアサ商事グループのシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のロボットエンジニアリング(前橋市、佐古晴彦社長)。
 中小企業の製造現場などでは、専用の自動化システムを構築するほどではないが、昼休みや夜間だけ自動化したいなど、手軽な自動化のニーズがある。その要望に応えるのがロボコンボだ。

 キャスターが付いた可動式で、使用する際は機械前面に固定する。専用の固定機構により精密に位置決めがされるため、取り付け後の調整などは必要ない。固定後は電源と制御の配線、エアコードをつなぎ、あとはワークに合わせたプログラムを呼び出せばすぐに稼働させられる。

  • キャスターが付いた可動式

  • ロボコンボを精密に位置決めする固定機構

コストダウンを徹底

構造を工夫しコストを抑えたストッカー

 「手軽な自動化」で十分な費用対効果を得るには、価格を抑える必要がある。
 「工作機械向けのロボットシステムは1000万円以上するのが当たり前だが、コストダウンの工夫を積み重ね、価格を640万円に抑えた」と曽我課長補佐は話す。

 例えばワークストッカーの設計だ。多段式のストッカーでは、使用する段の棚板を引き出し、決まった位置で固定する機構が必要になる。シリンダーなどを組み合わせれば構築できるが、動力機構を付けるとその分コストが上がる。そこで、動力を付けずにロボットハンドで引き出せる棚板や、左右のレールを手前に傾斜させることで、自重で固定と位置決めができる機構を考案した。

ユアサ商事曽我吏司課長補佐(左)とロボットエンジニアリング品川亮営業技術部長

 その他、ストッカーに使う切削部品の一部を板金部品に置き替えるなど、あらゆる部品、部位を見直した。板金部品に置き替えることでストッカー内でのワークの位置決め精度は下がるが、それでも問題が生じないよう、動作プログラムやハンドの爪先、ジグの形状などを工夫した。
 「FA設備を設計する際は通常『いかに位置決め精度を高めるか』を考えるが、それとは真逆の発想で苦労した」と設計を担当したロボットエンジニアリングの品川亮営業技術部長は言う。

旋盤用、上位版も開発

ファナックのロボドリル向け(=写真)以外のバージョンも開発中

 MⅠはファナックのロボドリル向けだが、旋盤用や、ファナックの協働ロボット「CRX」を搭載するバージョンも開発中だ。また、MⅠの機能を高めた上位グレード版も開発する。コンベヤーなどと組み合わせて使う物流・ハンドリング用途向けの案もあるという。

 「2016年に設立したグループ会社のロボットエンジニアリングがあったからこそできた製品。ロボコンボは商社であるわれわれがエンジニアリング分野で本格展開するための大きな一歩」と曽我課長補佐は話す。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

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