生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.03.01

[特集 国際ロボット展vol.7] 自動化ラインで未来を/セイコーエプソン 内藤恵二郎 執行役員MS事業部長

「いかに現場の困りごとを解決するか、その視点が必要」とセイコーエプソンの内藤恵二郎執行役員マニュファクチャリングソリューションズ(MS)事業部長は言う。2022国際ロボット展(iREX)では樹脂部品の射出成形からロボットによる組み立てと梱包までを一貫した自動化ラインを「未来の工場」として展示するという。目的は工場の価値の向上だ。

レジリエンス強化が自動化の目的に

――足元の市場についてお願いします。
 2つの変化が見られます。1つは自動化システムを導入する目的の変化です。以前は、効率化や経済合理性を目的とした導入が主流でした。人件費と自動化投資を比較しメリットがある場合や不良率を下げることを目的とした場合です。しかし今回の新型コロナウイルス禍を受け、工場を止めないことを目的とした自動化投資が増えています。レジリエンス(しなやかさ)強化の観点から、工程やデータ処理の自動化ニーズが高まっています。

――もう1つの変化とは。
 顧客層の拡大です。スカラロボットに強みを持つわが社の顧客層は「3C」と呼ばれる、家電、コンピューター、情報通信機器がメインでした。ところが近年は太陽光発電装置や電気自動車の部品など環境関連産業での導入が増えています。医療機器の分野も同様で、急激に、しかも大量に必要とされた検査キットや検査装置などの製造で自動化ニーズが上昇しました。

――メーカー側にも変化が求められる。
 従来は自動化に慣れた顧客層がメインでしたが、今後は自動化に慣れていない方たちにどう提案するかも考えねばなりません。自社製品だけでなくパートナー企業の製品と組み合わせ、「いかに現場の困りごとを解決するか」との視点が必要です。そこで昨年、ロボティクスソリューションズ事業部をMS事業部に組織変更しました。対象をロボット周りだけに限定せず、幅広くソリューションを提供します。MS事業部が占める売上高比率は全社の3%ほどですが、今後確実な成長が見込める分野であり、自動化事業の推進が社会貢献にもつながると判断し、重点領域と位置付けています。今までは力覚センサーなど周辺装置の開発もロボットのための開発でした。今後もロボットが事業部の中心であることに変わりはありませんが、「顧客の困りごとを解決できるのであればロボット不要のシーンでも価値提供できる仕組みを考えよう」としています。

――ソリューションビジネスは手離れが悪くキャッシュフローも圧迫しやすい。
 自分たちが自信を持って迅速に対応できる領域のみを狙います。そもそもわが社は時計製造のために生産技術を作り込んだ歴史があります。最近はプリンターのヘッドなど非常に高度な組み立て技術が必要な部品も自動化しています。そうした技術は少し離れた分野ではものすごく威力を発揮する可能性があるので、どんどん提案したいと考えています。

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