[エディターズノートvol.4]イノベーションの源泉
イノベーションをどう訳すか。以前は「技術革新」とすることが多かった。これは1958年の経済白書で使われた表現で、さまざまな電気機器で生活や産業が大きく変化していった時代なら、その訳も悪くなかった。しかし、この訳語では不十分なことも徐々に知られてきた。イノベーションは新技術を用いた製品開発に限った話ではない。販売方法や生産方式、組織体制などより多様な要素を含む概念だ。
訳語の候補の一つに「新結合」もある。これはイノベーションの生みの親ともいわれるオーストリア・ハンガリー帝国生まれの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターの定義に基づく。各要素は従来からあるものだとしても、その「新たな組み合わせ」で、新しい価値が生まれるとの考え方だ。シュンペーターがこの概念を発表したのは100年以上も前のこと。今の研究者からすれば、現代のイノベーションを捉えるにはこれも不十分だとお叱りを受けそうだが、イノベーションを模索する上で一つの考え方にはなるだろう。
ビジネスで「新結合」を探すにはどうすればよいか。簡単な方法の一つが、他業界のやり方を参考にすることだ。他業界のやり方を自社事業に応用できれば、それも一つの新結合といえる。
ロボダイ記者も全員会場に
直近でいえば、7月4日から愛知県で開催される「ロボットテクノロジージャパン(RTJ)2024」だ。
RTJはロボットや自動化というテーマは明確だが、金属加工業やその他製造業、物流業、三品(食品・化粧品・医薬品)産業など、幅広い業界の関係者が来場する。出展者もさまざまなターゲットに向けて製品やシステム、サービスなどを提案する。もちろん「自社の業界向けの提案」は優先的にチェックすべきだが、空いた時間で参考になるかもしれない「他業界向けの提案」をチェックできる。
もともとロボット業界では、開発側の当初の想定とは違う用途で活用されている製品も珍しくない。「レストランを想定して開発した配膳ロボットが工場の部品配膳に便利だった」「倉庫作業を想定して開発したロボットハンドが、製造現場でも役立つ製品だった」など、枚挙にいとまがない。他業界向けの提案であっても「自社に応用できる要素はないか」と考えれば、イノベーションのアイデアが見つかるかもしれない。
RTJを主催するのはロボットダイジェストを運営するニュースダイジェスト社(名古屋市千種区、樋口八郎社長)で、ロボットダイジェストはRTJのオフィシャルメディアだ。
ロボットダイジェストの記者も会期中は全員現地入りして会場で取材を行う。ロボットダイジェストでは特設ページ「会場速報」を開設し、会期中に会場から各社の展示や会場の様子などの最新情報を発信する。
会場速報では詳細までは伝えられないため、気になる製品や企業があればぜひブースまで足を運び、その出展者と直接話をしてほしい。アイデアは現場だけでは生まれない。
7月4日~6日はぜひ会場に。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)
※「エディターズノート」はロボットダイジェストの編集後記として毎月の最終平日に掲載しています。
※「月刊生産財マーケティング7月号(7月1日発刊)」でもこのコラムの再編集版をお読みいただけます。
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