生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2024.11.01

[SIerを訪ねてvol.50]利他主義を掲げて食品業界に貢献/アルトリスト

アルトリスト(東京都調布市、橋田浩一社長)は、食品製造機器や包装、出荷機器を製造する他、システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)としてロボットシステムを開発する。橋田社長は「食品工場内の装置をワンストップで設計、製造できるのは、これまで積み上げてきたノウハウがあるからこそ」と語る。

ワンストップで食品ロボットを提供

 アルトリストは食品製造装置や包装機器の開発を手掛ける。2008年の設立当初からSIerとしてロボットシステムの開発にも力を入れており、食品産業向けの各種専用機とロボットシステム両方の開発をワンストップで提供する。
 食品機械の開発では、食品に直接触れる工程の自動化は特に難易度が高いとされる中、同社は食品製造工程の上流から下流まで、製造から出荷段階まで全ての設備を手掛ける。橋田社長は「食品工場向けのあらゆる装置を設計、製造できるのは、これまで積み上げてきたノウハウがあるからこそ」と語る。
 これまで開発した装置は、ジャム原料のようなゲル状材料対応の異物吸入装置、樹脂製ボトルの包装装置、ボトルの箱詰め装置、パレット(荷役台)への積みつけ(パレタイズ)装置などだ。

アルトリスト=利他主義

利他主義を社名に掲げる橋田社長

 社名の「アルトリスト」とは、英語で利他主義者という意味だ。「顧客や取引先、そして従業員の利益を第一に考えれば会社が繁栄する」という考えから、利他主義者を企業理念に据える。いつも心に留め置けるように社名にもした。設立時は3人で事業を開始し、徐々に社員数を増やした。現在は約20人が業務にあたる。

 元々は機械商社で設備開発に携わっていた橋田社長。当時、設備開発の実務は他社に発注することが多かったという。そんな中「開発を外注していると、ノウハウが自社内に蓄積せず、どんどん外部に出てしまう」と感じ、会社を興した。
 2021年10月には組み立て工場として相模原市中央区に相模原技術センターロボット研究開発所を開設した。「開発と製造を自社内で完結させることで自由が利く。現在、わが社の基幹開発製品は自社生産している」と話す。

粉じんの出ない開梱ロボット

FOOMA JAPAN 2024で披露した段ボール開梱ロボット

 今年6月上旬に東京都江東区の東京ビッグサイトで開かれた世界最大級の食品総合展「FOOMA JAPAN(フーマジャパン)2024」で注目を集めたのが段ボール開梱(かいこん)ロボットだ。本製品は人間の手のような動きでテープを切り、吸着パッドでフラップを開ける。ダンボールの部分を切らないため、粉じんが発生しない。異物混入を防げるため、食品会社だけでなく製薬会社などでも採用されている。

食品の安全を設計から守る

「食品SIerといえばアルトリストを思い浮かべるようになってほしい」と語る橋田社長

 食品業界では安全性が最も重視される。そのため、定期的な洗浄やメンテナンスが必要となり、分解や再組み立てのしやすさが求められる。また食品工場の多くは24時間稼働するため、装置やロボットが壊れない、止まらないことが重要視される。食の安全と装置の耐久性を両立するために、橋田社長は「壊れようがない、シンプルな機構に設計することを心掛けている。シンプルな機構であればあるほどメンテナンスや洗浄もしやすい」と話す。

 また、同社はこれまで顧客の要望に合わせてシステムを開発してきたが、近年は標準システムの提案にも力を入れる。現在開発しているのは、細かく刻んだネギを一定量ずつ供給する装置だ。水分が含まれる食品を吸着パッドなどで吸着すると、吸着部分に水分が吸い込まれてしまうため、うまく扱えないことがある。そこで同社は水分を吸い込まずにエアで巻き上げて一定量を取り分ける特殊な機構を開発した。「食品はひとつひとつ形状が違うものが多い。明確な答えがないから試行錯誤した経験が生きてくる。それが食品製造装置を作る面白さ」と橋田社長は語る。

(ロボットダイジェスト編集部 斉藤安紀)

TOP