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2025.03.31

コラム

[エディターズノートvol.13] 手取り、足取り

 4月からは新年度。新年度といえば、新入社員が入社する時期だ。
 新卒社員の場合、社会人としての振る舞い方も業務の基礎知識も知らないところからのスタートになるため、戦力化するまでに丁寧な指導が必要になる。少子化で若手社員の数は多くないため、少ない新人に「手取り足取り」で教える現場も多いことだろう。

 「最初は手取り足取り教えなければ、何もできない」、これはロボットも同様だ。ロボットは動作を覚えさせるティーチング(教示)をしなければ何もできない。
 最近は協働ロボットなどでダイレクトティーチング機能搭載の機種が増え、文字通り「ロボットの手を取って」動作を教え込めるロボットも増えている。

 しかしその一方、ヒト型など双腕構造のロボットも増え、協働型であってもダイレクトティーチングでは教示しにくいロボットも増えている。2本のアームを協調させて複雑な作業をさせるには、高いティーチング技術と大きな手間が必要になる。
 人工知能(AI)技術を活用すれば細かいティーチング作業は不要にできるが、今度はAIに学習させる作業が必要だ。

代理店のTechShareが自社イベントで展示したDobotの「X-Trainer」

 こうした課題を解決するため、AIに双腕作業を学習させるためのシステムが登場している。中国Dobot Robotics(ドゥーボットロボティクス)の「X-Trainer(トレーナー ※関連記事はこちらから)」などがそれに当たり、同様のシステムを中国のREALMAN ROBOTICS(リアルマンロボティクス ※関連記事はこちらから)なども販売している。
 手前の2本の操作用アーム先端のハンドルを両手でつかんで動かすと、奥のロボットが同様の動きをする。いわゆるマスタースレーブ方式の制御だ。この状態で何度も作業をすることで、AIに人の作業を覚えさせられる。グリッパーの開閉なども手元のボタンで操作可能だ。

 何度も「手取り足取り」教えることになるため、ある程度の手間はかかるが、手作業で行っている作業をそのままロボットに落とし込める。
 AI学習では仮想空間を活用するものなど複数の方法が研究されているが、目の前のアームを実際に動かして人の動きを覚えさせるこの方式ほどシンプルなものはないだろう。中国ではこうしたシステムを多数設置してAIに人の動作を学習させる施設を複数のメーカーが開設している。

 どの方式にも一長一短あるが、「ロボット用AIに動作を学習させるためのツール」に今後注目が集まりそうだ。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

※「エディターズノート」はロボットダイジェストの編集後記として毎月月末に掲載しています。

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