物流自動化の局面を変えねば、やがて廃れる/ギークプラス 加藤大和社長
AGVと自動倉庫の良いところ取り
――ポップピックの特徴は。
従来比で2倍近い高さ3.7mの専用棚や、棚から物を取り出す作業ステーションを開発し、ポップピックとして提案します。新たに搭載質量が最大1200kgのAGV「P1200R」もラインアップに追加しました。基本は物品を専用のコンテナに収めますが、棚板のレイアウトを変更でき、コンテナよりも大きな物も扱えます。従来シリーズで使用したAGVや棚も使えます。作業ステーションには、コンテナを取り出す専用クレーンを2台搭載しており、処理能力を上げました。
――非常に万能なシステムとの印象を受けます。
ただ、ポップピックが顧客に最適とは限りません。AGVと自動倉庫、物品を移動させるマテリアルハンドリング(マテハン)機器、産業用ロボットなどを組み合わせて、大きな導入効果を得た物流現場も少なくありません。全体最適を念頭に置きながら、システム構築をしなければ、顧客の課題解決に貢献できません。
――そこで、ソリューション事業に注力している。
そうです。顧客の課題解決を考えると、他社製品と組み合わせた提案も大切です。本来ならば、各メーカーを中立的に見て相談できる窓口が業界には必要と考えています。システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)ならば、その役割を担えるかもしれません。ただ、物流業界に強いSIerは国内にも世界にも多くない。そこで、少なくともわが社は、自社の営業成績だけを気にして、顧客に最適ではない場合に売り込むのはやめようと。そうしなければ、物流自動化機器の業界内で共倒れしてしまう可能性もあります。現に中国では問題になり始めています。
道具を提案してもダメ
――中国での問題とは何でしょうか。
中国では日本に先行して、物流自動化関連の市場が勃興しました。すると雨後のタケノコのように、多くの企業が参入してきた。しかし、技術力や提案力が伴っていない会社が多く、市場が単なる価格だけの競争になった。また、その状況で顧客に適切な提案をできる訳もなく、大半のユーザーの満足度を下げ、期待を裏切ってしまいました。日本でその失敗を繰り返してはいけないと考えています。競合の数社とは、すでに協議もしています。
―――国内を中国市場と似た状況にしない。
日本市場も、従来とは様相が変わると見込んでいます。これまでは自動化システムに知見があり、5年後や10年後を見据えた設備投資に積極的な企業が、盛んにAGVや自動倉庫を導入してきました。今後は少子高齢化が進み、人手不足が本格化します。目前に迫った人手不足の課題を解消するために、自動化システムの需要は伸びるでしょう。ただ、目の前に「ハサミからのこぎり」まで多くの道具があります。どれが自社に最適か分からない顧客が増えるはずです。そんな時に、道具を提案していてはいけません。顧客が欲しいのは、課題の解決法です。
――なるほど。
そこで、わが社ではソリューションの提供を強化します。基本的には3段階で提供します。まずは、ポップピックなどハードを中心にした物流現場の自動化ソリューション「RaaS(ラース)」です。これまでの売り切りの形だけでなく、従量課金制も取り入れます。場合によっては他社の製品でも積極的に提案します。その次は倉庫内で全体最適化を目指すべきです。そこで、マテハン装置などとRaaSの制御システムを連携させる倉庫管理システム「FARMs(ファームス)」を開発しています。
――3つ目は。
個社で複数の倉庫を持つ企業は多いです。それら、複数の倉庫の管理状況などのデータを統括して連携させるシステム「nest(ネスト)」を開発中です。複数の倉庫を連携させると、全拠点の保管や配送状況などを最適化できます。年内には形にして発表したいです。