[特集SIerになろうvol.11]SIer育成の施設が全国各地に次々と
公的団体と連携して研修
FAプロダクツ(東京都港区、貴田義和社長)とオフィスエフエイ・コム(栃木県小山市、飯野英城社長)、ロボコム(東京都港区、天野真也社長)は18年5月16日、栃木県小山市内にロボットのショールーム「スマートファクトリー・コンダクター・ラボ」を開設した。栃木県産業振興センターの「とちぎロボットフォーラム」と連携して、展示する産業用ロボットや周辺機器を使ったSIer向けの研修も開催する。
施設では物流や食品、機械、自動車など業界ごとの自動化ソリューションを展示する。開所時点で6メーカー10機種以上の産業用ロボットやさまざまなメーカーの周辺機器を設置しており、研修では各メーカーの特徴を踏まえて、システムインテグレーション技術を指導する。
施設にはセミナールームもある。複数台のロボットを同時に扱うシステム構築など、具体的な事例を基にした講義を開く。またエンジニアの増加を狙い、地元の教育機関との連携や学生向けの体験会も計画する。
産学官連携組織の後押し
五誠機械産業(佐賀市、南里史人社長)は18年2月、同市内に「九州ロボットセンター」を開設した。背景には佐賀県や佐賀大学、地元の有志企業で組織する「佐賀県ロボット研究会」の後押しがあった。
それまでの佐賀県内での産業用ロボット活用事例は大手企業の関連工場に限られ、中小企業ではロボット導入の機運が低かった。地域にはSIerの育成環境がなく、地元のエンジニア向けの指導員がいなかった。
そこで五誠機械産業はSIerの研修センターも併設した産業用ロボットの展示施設を立ち上げた。施設では、ロボットハンドの付け替え装置と画像センサーを組み合わせたピッキングロボットや、力覚センサーを使ったバリ取りロボットなどテーマ別で9つのシステムを展示する。指導員3人が在籍し、月に1度の定例セミナーや年に1度のロボット展示会を開く。また個別での講習依頼にも対応する。地元の協力企業のエンジニアを中心に受講生は順調に増えている。
協働ロボに特化した育成
大阪市都市型産業振興センター(大阪市、秋山千尋理事長)は補助事業を活用し、協働ロボットのシステムインテグレーションに特化した講座を開設した。
大阪市都市型産業振興センターは16年12月から、「インダストリアル・オートメーション・テクノロジー・センター(IATC)」でFA関連のセミナーを開催。受講者へのアンケート調査では食品製造や飲食店、小売業などの分野で人と一緒に作業できる協働ロボットへの関心の高かった。一方でSIer向けの研修時の調査では、協働ロボットを扱うSIerの不足も判明した。
そこでSIer向けの研修に「人協働型ロボット」コースを追加した。IATCは実証施設の役割もあり、協働ロボットの導入を検討するユーザーが課題を持ち込むケースが多いが、研修の受講者もその実証テストのシステムを構築する機会を設けた。基礎的な技術だけではなく、実務に近い環境で受講者がシステムインテグレーション技術を習得できる制度を整えた。
国だけでなく地方自治体も
経済産業省からの補助事例以外にも、産業用ロボット活用を積極的に支援する地方自治体がある。その1つが相模原市だ。同市は15年に「相模原市産業用ロボット導入補助金」制度を創設した。同市内での産業用ロボットの導入だけではなくSIer事業の参入にも経費を最大1000万円まで助成する。
またソフト面での支援もある。15年に「さがみはらロボット導入支援センター」を開設した。定期的にセミナーなどを開催し、産業用ロボットの導入支援やSIerなどの技術者育成に取り組む。「ロボットシステムインテグレータ養成講座」では、SIerの広範囲にわたる業務プロセスを実際の業務のように再現し、参加者の実務能力を強化する。
また他には、北九州市も独自の補助金を制定。「産業用ロボット導入支援センター」を設け、導入支援や産業用ロボットを扱える人材を育成する。