[SIerを訪ねてvol.6]人材育成に力を入れる専業SIer【前編】/高丸工業
売り上げの100%がSIer業務
高丸工業は、自動機械の開発、製造をする会社として1967年に設立された。自動機械はロボットではないものの、「人に代わって作業をする」という点では考え方は同じ。
85年に高丸正社長が2代目社長に就任すると同時に、ロボットを使った自動化システムの開発、製造を本格的に事業として立ち上げた。
やがて自動機械でもロボットを使うことが多くなり、同社の事業はSIer業務一本に絞られた。高丸正社長は「わが社の売り上げは100%がSIer業務。多くのSIerは本業を別に持つが、わが社はSIer事業が全て。なので、自社だけでなく業界の振興に必死です」と笑う。
高丸社長は全国各地の中小企業支援団体やSIerが開催するイベントなどでセミナーや講演をする多忙な日を送っている。その回数は年間60回を超える。「セミナーのため2週間のうち6回出張することもある。福島県や新潟県、東京都、佐賀県など行き先はさまざま」と話し、SIerの視点からロボットの有効活用を訴えている。
大規模な自動化システムの開発にも対応
現在は中小企業のロボット導入支援に注力している同社ではあるが、かつての顧客は、重工、重電、電車、建設機械などが中心。溶接加工をする大物ワーク(加工や搬送の対象物のこと)が多く、中には重さが10tを超えたり、1辺が10mを超えるようなワークもある。今までに作ったシステムで最も重量のあるワークは、実に250tだ。
当然自動化システムはワークよりも大きく、システムを組み立てる現場はさらに大きい。
同社の製造現場はJFEスチールの工場内にあり、最も大きいクレーンは可搬重量25tにもなる。そんな環境だからこそ、巨大な部品を組み立てることができるのだ。
製造現場は、部品を製造するエリアと、システムを組み立てるエリアに分かれている。部品製造エリアでは溶接やグラインダーの火花が飛び、大小さまざまな部品が作られる。部品製造エリアの隣には、システムの開発時にロボットの動きを確認するため、さまざまな種類のロボットが設置されている。組み立てエリアではクレーンが鉄骨を自在につり上げ、自動化システムの骨格部分を組み立てていく。
同社が開発する自動化システムの規模について「例えば、重量が4tもある700㎏可搬のロボットを毎分60mの速度で100m自走させるようなラインを製造することがよくある」と高丸社長は自信を見せる。
開発を支えるのは4人の技術者だ。大規模な自動化システムの詳細な図面を作成できる質の高い人材に限られる。「人材は採用したいが、誰にでもできる仕事ではないので難しい」と頭を悩ませる。