[特集 2023国際ロボット展vol.7]トレンドは「ソリューション提案」/ロボットメーカー
2023国際ロボット展(iREX2023)の見どころは何と言っても、ロボットメーカー各社の最新の自動化提案だろう。ロボット業界のトレンドの一つに「ソリューション提案」があり、最近はロボットの単体売りから周辺機器やデジタル技術などと組み合わせたソリューションへと提案の軸足を移すメーカーも増えている。今回展でも主要各社による最新のソリューションを間近で体感できるはずだ。
「オープンプラットフォーム」を全面に
デンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)は「オープンプラットフォーム」を全面に掲げ、4年ぶりの国際ロボット展に臨む。エンドユーザーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)、周辺機器メーカー、そして同業のロボットメーカーなどの多様な層の企業に向け、オープン化がもたらすメリットを訴求する。
今回展では①昨年発売した新型協働ロボット「COBOTTA PRO(コボッタプロ)」②オープンで拡張性が高いリアルタイム制御ソフトウエア「TwinCAT(ツインキャット)」③人工知能(AI)ソリューション④システムソリューション⑤デジタルトランスフォーメーション(DX)/デジタルツイン⑥エナジーマネジメント――の6つのゾーンを設け、全体で29ものデモシステムを出展する。
「それぞれのゾーンでシステムの作り手や使い手の対象や、作り手や使い手が享受するオープン化のメリットが変わる。こうした違いを分かりやすく打ち出すため、今回初めてゾーニングの手法を取り入れた」とソリューション事業部FAシステムエンジニアリング部の澤田洋祐部長は説明する。
各ゾーンには数多くの見どころがある。例えば、④のシステムソリューションのゾーンの一角には研究所(ラボ)を設け、同社が近年力を入れているラボや実験室内の作業プロセスを自動化する「ラボラトリーオートメーション」関連のデモシステムを展示する。
②のゾーンでは、ドイツの制御機器メーカーのベッコフオートメーションが開発したTwinCATとデンソーウェーブのロボットを組み合わせたソリューションをPRする。
⑤のDX/デジタルツインのゾーンでは、ゲームの開発環境を採用した最新のロボットシミュレーションソフトと仮想現実(VR)技術を披露するという。澤田部長は「メーカー固有の開発環境ではなく、開発者の人口が多いゲームの開発環境を取り入れることでシミュレーションソフトのオープン化を実現した」と述べる。
使い慣れた開発環境で
そもそも、同社がオープン化の戦略を本格化させたのは2006年ごろにさかのぼる。ミドルウエア「ORiN(オライン)2」によるプログラミング言語のオープン化の取り組みを欧州でスタートしたのを皮切りに、一般的に普及している開発環境に対応した機能を相次いで開発し、ロボットの使い勝手を高めてきた。
ロボットを含むFA機器メーカーはこれまで、独自の開発環境やプログラミング言語を出して差別化を図るのが主流だった。だが、開発環境やプログラミング言語がメーカー各社でばらばらだと、エンドユーザーやSIerが使いこなすのに大きな手間がかかる。
「『お客さまには使い慣れた開発環境でシステムを構築してほしい』との思いから、オープン化へとかじを切った。今回展ではぜひ、エンドユーザーやSIerなどの幅広い企業の方からオープン化に対する『生の声』を聞きたい」と澤田部長は強調する。